佐佐木 實 展 イ充つ㊁

2月18日[土]―28日[火]

vol.517 作家在廊予定日: 2/18.19.26~28

 将棋や囲碁の専門棋士の頭は、ひとつのマスに、交点に置かれたひとつの駒や石に、ゲームの無数の進行の可能性を読み取り、悩み、興奮し、喜び、絶望したりするという。
佐佐木實の「カタカナ一文字」による近年の表現も、たった一音、一文字に蝟集し流れ込む意味や感情や人生を透視し、棋士と対手が脳内で可能性を追い、戦うように、佐佐木自らが私たちと向き合い、生きようとする試みである。
 盛岡で発表した「ヒ象る」では、人に許された言語が「ヒ」だけになったらというコトバの拘束性を強く意識したものだったが、新潟絵屋での前回と今回の発表「イ充つ」では、その限定になぜか佐佐木自身が弾んで、ダンスをしているようにさえ見えるのが面白い。
 ヒとイの違いなのか、佐佐木自身の制作姿勢の変化なのかはわからないけれど、今回の新作で「イ」がついに物質化、物体化しだしたのを見ると、言葉・文字という抽象的なもの(と考えてしまいがちなもの)が、じつはひどく肉感的な、ナマモノなのだということをつきつけられる。こんなふうに言葉と向かい合わせてくれる鏡が在る。
大げさかも知れないが、奇跡は、きっとこういうことを言うのだ。(企画 大倉 宏)

佐佐木實 (ささき みのる)
盛岡市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程藝術学専攻修了(美学)。フランス国立社会科学高等研究院博士課程言語学専攻修了。博士(言語学)。二十代半ばに渡欧。パリでは言語学を学び、制作と学問の双方から言葉/文字を記す行為に向かいあった。2006年帰国。11年岩手県美術選奨受賞。近年の個展は11年盛久ギャラリー(盛岡)、新潟絵屋、北書店画廊、12年Cyg art gallery「書書葉葉」(盛岡)、13年OGU MAG「佐佐木實の書 -型ハメ 型モレ-」(東京)、14年新潟絵屋など。14年Gallery 彩園子(盛岡)での「明日の仕事、12人」のひとりに選ばれ『ヒ象る』で参加。

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PHOTO(上): 「イ」2016年 鉛筆・色鉛筆・インク/紙 28.1 x 17.1 cm

イ充つ

佐佐木實

PHOTO(下): 「イ」2016年 鉛筆・色鉛筆・グワッシュ・インク/紙 26.8×11.4 cm

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ギャラリートーク 佐佐木實×大倉宏
2.18[土] 19:00~20:00 (21:00まで開廊)参加料500円/申込不要