フジタヨウコ展

7月12日wed―20日thu

vol.531 作家在廊予定日: 7/12・16・17・20

 フジタヨウコは去年、村上の海に近い自宅の一角に穴窯(あながま)を築いた。10月の初の窯焚きを、見に行った。焚き口を開け薪を足すときに見える火に血がざわめいた。窯を囲む人々も、一様に気分が浮き立っていた。燃え盛る火にはふしぎな力がある。それは人が原始から受け継ぐ心中のなにかに働きかける。
開かれた厚い本に銀色の枯れ木の立つ作品は、その窯で焼かれた。表面は、薪の灰が融けた自然釉。火中に降る灰に濡れた平原のなだらかな起伏が美しい。
 見に行った時はまだ素焼き状態だったが、まるまる肥えた鳥が、猫や犬や渦の上に乗る、フジタらしい作品群も準備されていた。この人の造形は、幻想的なイメージに、どこか原始(初)の気配がある。
 その秘密は火にあるのかも知れない。(企画 大倉 宏)

フジタヨウコ (藤田 陽子)
1995年女子美術短期大学卒業。96年同専攻科修了。同年坂爪勝幸氏に師事。2000年新潟現代美術リレー展、08年越後の花鳥画展(農舞台/十日町市)、11年女子美術大学アートミュージアム「予期せざる出発」、16年アートスタジオDungeon「地下光学」(東京)出品。個展は、03・04年ギャルリー炎舎(新潟市)、05~10年(毎年)11・13・15年新潟絵屋、09年ギャラリーいなば(東京)、10年ギャラリーさやけ(新潟市)、12・14・16年ギャラリー彩(新発田市)など。09年長三賞、13年日本陶芸展入選。16年地元の村上市瀬波温泉にアトリエと教室、ショップを兼ねた「Toi 陶房」設立。

▶みるものとよいところ 会場のようす

「失われた言葉と風景」2017年 陶 55.0×34.0×H25.0cm

PHOTO(下): 「失われた言葉と風景」2017年 陶 55.0×34.0×H25.0cm