渡邊 博 展

3月2日fri―10日sat

vol.550

 渡邊博の新潟絵屋での展示は2人展を含めて今回で7回目。
 はじめて砂丘館との2会場での展示となる。内容も回顧展的に旧作と新作をとりまぜてもらった。年末に久々に南房総市の渡邊さんの家を訪ね、絵を新潟に運んだ。数年前に発症したガンの治療で病院通い。最近は椅子に座ることもできず、楽しみにしていた新潟にも来られないと、後日連絡をいただいた。
 その砂丘館の案内状に原稿を依頼したら、長文の回想が送られてきた。サラリーマン生活をやめ東北、北海道、静岡と放浪した日々のことが前半に綴られている。放浪とは何だろう。それは世界のどこにも、自分の終の住処がないことを確認する、果てのない旅なのだ。
 日展、光風会という住処も早々に捨て、個展で発表し続けてきたことだけでなく、渡邊博の絵の軌跡がひとつの放浪の姿をしている。住処のないことが住処であるような放浪感覚-浮遊感は、この人の絵を貫くエネルギーの源である。近年はもっぱら水彩を描いてきたが、水彩とは思えない巨大な画面の数々が砂丘館の会場で展示される。
 絵が秘める空間の大きさ、奥深さは新潟絵屋に並ぶ小品にも共通している。
 この町に生まれた素晴らしい画家の全体像を、新潟の人たちに知ってほしい。
(企画 大倉 宏)

渡邊博_哀しみの残滓B渡邊 博(わたなべ ひろし)
1938年新潟市生まれ。熊谷喜代治にデッサンを学び、後笹岡了一に師事。日展、光風会に出品し66年光風会会員となるが、68年退会。以後は紀伊国屋画廊、美術ジャーナル画廊、現代画廊、ギャラリーXepia、ギャラリー汲美、(株)東京現像所、K’sギャラリー(いずれも東京)、ギャラリーDEN(ドイツ・ベルリン)などで個展により発表。新潟での個展は91年新潟伊勢丹、2002・05・08・12・16年新潟絵屋。千葉県南房総市在住。

砂丘館にて
「闇の明るさ 渡邊博展」 同時期開催中。2月23日―4月1日(好評につき最終日が延期になりました)

詳細は砂丘館HP www.sakyukan.jp へ

PHOTO(上): 「傘の女」1990年 油彩/キャンバス 53.0×53.0cm
PHOTO(下): 「哀しみの残滓」2016年 水彩/紙 34.0×12.0cm