しんぞう展

3月17日sat―30日fri

vol.552

 スイスの画家クレーは点、線、面、色など形の要素の種子から発芽し、有機的に成長し、絵が生まれると考えた。
 クレーの絵の豊かなイメージは、造形の果てに実る果実のようなものだったようだ。
 横浜生まれの新潟の画家しんぞうの絵は、イメージから逆に始まる。浜で見かけた鳥の足跡、おしゃべりの中で記憶に残ったこと、子育中に気づいたこと。
 いろいろな場所からイメージが紙に舞い降り、進化や変化(へんげ)して現れる絵は、時にショッキングだったり、謎めいていたりする。発端のイメージを語る画家に耳を傾けていると、目が開かされることが多かった。
 その絵を時折、日本家屋である砂丘館の床の間や壁にかけている。日々目にしていると、絵のイメージが時に遠ざかり、違うものが見えてくる。たとえばこれらの絵には、幾何学的空間である日本間に拮抗する骨格の強さがあるということ。言葉を変えれば造形の確かさ。
 クレーの絵とは逆にイメージの種子より成長し、造形=強度のある絵画空間の果実を実らせる樹がある。(企画 大倉 宏)

しんぞう_視線

しんぞう
1974年横浜市生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒業。個展は、新宿眼科画廊(東京)、DAMギャラリー(韓国)、福住画廊(大阪)、ギャラリーsfera(京都)、2012年砂丘館 「あなたの心の裏の河」(新潟市)、13~16年新潟絵屋など。そのほか09年 「大地の芸術祭」に出品。芸術道場GP(グランプリ)銀賞、第29回損保ジャパン美術財団選抜奨励展入選、第44回神奈川美術展入選など受賞。装画に 「臨床の詩学」(春日武彦・著/医学書院)がある。新潟市在住。 www.sinzow.com

PHOTO(上): 「最後は自由になる、」2017年 墨/和紙 41.0×66.0cm
PHOTO(下): 「視線」2017年 墨/和紙 47.5×32.0cm


関連イベント

ギャラリートーク 「絵のはじまる場所」

3.24[土]15:00〜16:00
聞き手: 大倉 宏 参加費500円 申込不要