9/2[水]―13[日]
vol.596
雨の朝、久しぶりに安田(阿賀野市)の漆山昌志を訪ねた。仕事場の前の空き地にぎっしり石像がひしめき壮観。どんどん密になっている。新作数点を撮影したあと、ほど近いヤスダヨーグルトの工場前にできた売店「Y&Yガーデン」と禅寺の頼勝寺に行った。売店の前庭には彼が二科展に出品した大きな石像が方々に置かれ、禅寺には釈迦と十人の弟子や十一面観音の像、そして大きな涅槃のレリーフがある。どれも素晴らしかった。前者は彫刻家、後者は石工の仕事なのだろうが、どちらも同じ漆山の作。涅槃の釈迦の顔は、まるで気持ち良く昼寝しているようで、しみじみそれを見て、漆山の像の本質は幸福感なのだと思った。仏教は人生のはかなさを言い、災害や疫病の広がる現代は不安を呼び覚ますけれど、この世に、この体をもって生きていることは、幸せだと、彼の刻む人は言う。人生をはるかに凌駕する時間の中に存在してきた石に、鑿という耳をあてて、その一つの言葉を漆山は聞いている。(企画者:大倉 宏)
漆山昌志(うるしやま まさし)
1955年安田町(現阿賀野市)生まれ。愛知県岡崎市で石工修業。88年から県展、芸展に石彫を出品。2000年二科展特選受賞。04年十日町石彫シンポジウムに参加。二科会会友、新潟県美術家連盟理事。新潟絵屋では01・03・06・08年に個展、14年書家の故小山素雲との2人展を開催。阿賀野市在住。
PHOTO(上): 「お地蔵さん」 2020年 インド砂岩 H30.0cm
PHOTO(下):「望」 2020年 安田石 H59.0cm