伊津野雄二 展 「手しごと 夢おくり」

11月2日wed―10日thu

vol.509

 名手は楽器の隠れた音を引きだすというが、伊津野雄二の彫刻を展示する度に、新潟絵屋の空間が、見知らぬ楽器のように鳴りだす。たった一度だけ実際に見ていただいたこの場所を、イメージして作品を選び、新作を加えるその仕事は、いつも繊細で、丁寧だ。
 今回のテーマは「手しごと 夢おくり」。ひとりの生きる物語はともに歩む物語によって広がり、支えられるが「心をこめた手仕事も生活にふくらみを与える」ひとつの物語なのだと思う、と手紙にあった。
 西欧の厚みある人間像の文化に震撼され、愛知県岡崎の地でその憧憬を耕し、現実を生き、木の美しく逞しい物語に造形・創造し続けてきた人の手が紡いだ夢が、どんな歌を、秋の展示室に誘い出すだろう。
(企画 大倉 宏)

伊津野雄二 (いづの ゆうじ)
1948年兵庫県生まれ。69年愛知県立芸術大学美術学部彫刻科中退。75年知多工房設立。木彫、家具木工芸を手がける。名古屋画廊 (名古屋)、ギャラリー椿 (京橋)、ギャラリー島田 (神戸)、新潟絵屋で個展開催。作品集に 『伊津野雄二作品集 光の井戸』(2013年 芸術新聞社)がある。

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PHOTO: 「夢おくり(常夜燈)」2016年 木彫(くす、とち) h41.0×w13.0×d9.0cm