野中光正・村山耕二 展

4月22日sat―30日sun

vol.523 作家在廊予定日: 4/29、30(時間未定)

 3年前、仙台の杜の未来舎ぎゃらりぃの斎藤久夫さんの企画でのこの2人展は、私が展示をさせてもらったけれど、愉しかった。絵画とガラス、平面と立体という違うものが、同じ場所で、いい感じで共鳴する、その響きから発想がわいた。
 ふたりの共通の魅力は色だろう。砂は、高温で融かすと必ずガラス化するそうで、いろいろな土地の砂のガラス器が並んだが、微妙な色合いの差が面白かった。作家の感性が色に繊細に反応していた。
 野中の近作は、ことに色の渋さの底の華やかさが深まってきた。村山の器も飄逸(ひょういつ)さと、やわらかさと、華やぎがある。
絵とガラスの響き合いが、今回はどんな変化を見せるのか、楽しみだ。
(企画 大倉 宏)

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野中光正「170120」野中光正 (のなか みつまさ)
1949年東京都生まれ。67年に絵画を、73年に木版画を始める。89年新潟県高柳町に移住、紙漉を学ぶ。91年かやぶきの家 (高柳)で個展、同年東京に戻る。以後、ゆーじん画廊、ギャラリーアビアント、ギャラリー枝香庵(東京)、高志の生紙工房ギャラリー、画廊Full Moon、砂丘館、新潟絵屋などで個展。2017年2月画集 『昭和四十五年の夏・野中光正』刊行。

PHOTO: 「170120」混合技法/和紙 60.8×45.6cm

村山耕二村山耕二 (むらやま こうじ)
1967年山形市生まれ。96年仙台に工房「海馬」設立。2001年モロッコへ渡航。サハラ砂漠の砂を融かして作り出す「サハラ」シリーズの考案と研究開始。07年モロッコ王国・王室へ作品献上品となる。11年宮城県芸術祭 (財)宮城県文化振興財団賞、13年 「仙台ガラス」グッドデザイン賞など受賞。 http://www.kaiba.org

中島佳秀 展

4月2日sun―10日mon

vol.521 作家在廊予定日: 4/2、8、9

 去年、中島佳秀の動物の絵の、毛だけが絵になったような、魅力的な抽象を紹介した。一点購入して、家のよく目につく壁に掛けている。媚びないが、冷たくもなく、適度な距離感でこちらを見つめ返してくる絵だ。
 今年は再び動物の絵を中心に展示する。動物が抽象になったのではなく、両者は平行して描かれているらしい。
 数年前の展示で、中島を動物画家と思った人がイルカの絵を注文した。中島は応えようとしてできなかった。中島の動物は、動物ではなく、中島から絵を引き出す爪のようなものなのだが、イルカにはきっと、爪がなかったのだ。
 近作で見る限り、その爪はごわごわした毛であったり、しわのよった肌だったり、主に触覚的なものとして作用している。きわめて部分的な動物なのだが、その部分の力で、全体が動く不思議なモノがここにある。
(企画 大倉 宏)

中島佳秀「いばらと、おどろ 7」

中島佳秀 (なかじま よしひで)
1975年京都市生まれ。都市計画・建築を学んだ後、独学で平面の制作を始める。2008年より個展を中心に平面作品の発表を行う。2010・11・16年新潟絵屋で個展開催。 http://www.yshdnkjm.com

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PHOTO(上): 「いばらと、おどろ 10」
PHOTO(下): 「いばらと、おどろ 7」2017年 ミクストメディア/紙 21.0×29.7cm

塩﨑 貞夫 展

3月2日thu―10日fri

vol.518

 砂丘館と2会場で開催する塩﨑貞夫展。
 3年前に亡くなった塩﨑の絵を、新潟の個展で見たとき、絵の匂いがすると思った。すこし甘いようだけれど、凛とした匂いだった。いい絵は匂いがする、と誰かが言ったけれど、本当にそうだ。絵柄としては痩せた女がもやのような空間に横たわる絵を、記憶するのみだったけれど、本人にはよくお会いした。新潟に来ると絵屋にも寄ってくれた。女のイメージが、古墳や塔や山や満開の桜やコスモスなどに変幻し、そのどれもが「死と鎮魂」のモチーフを奏で続けていたことを、昨秋ご遺族宅で残された遺作を通覧して感じた。
 その主題は画家個人にとって何だったのだろう。生きている寂しさと、死んでいる寂しさが、同じである空間を、画家は絵という大地に建築しようとしていたのだったかも知れない。そのひと続きの空間を歩きたい。生きる者と死せる者が視線を、ささやきをかわす空間の匂いを呼吸しながら。(企画 大倉 宏)

塩﨑貞夫(しおざき さだお)
1934年新潟県糸魚川市に生まれる。10代の頃療養生活を送る。56年国画会に初入選、以後毎年出品。63年国画会新人賞を受賞し会友となる。73年国画会を退会。77年~2005年文藝春秋画廊 (東京)で隔年で個展。97年アートギャラリー環 (東京)で個人コレクションによる清宮質文・塩﨑貞夫展。2007・08・09・10年 フォルム画廊(東京)で個展。04年~14年ギャラリー壹零參堂 (鎌倉)で隔年で個展。ほかアトリエ我廊(新潟)、たけうち画廊(新潟)、南青山画廊 (東京)、ギャラリー青雲 (東京)、ギャラリートータク (東海市)で個展。14年2月14日没。14・16年フォルム画廊で遺作展 が開催された。

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塩﨑貞夫展_箸の墓古墳

PHOTO(上): 「矢田丘陵の辺り」
PHOTO(下): 「箸の墓古墳」 1985年 油彩/キャンバス 65.0×50.0cm

同時期開催
2.15[水]~3.20[月祝] 会場:砂丘館
3.4[土] ギャラリートーク 「レクイエムの画家」
3.3[金] セミナー「箸の墓と卑弥呼の時代」

砂丘館会場のようすをブログでお伝えしています。

藤原 祥 展

3月12日sun―20日mon,holiday

vol.519

 藤原祥の近作が田畑あきら子の絵に近接して見えるのは、私の目の中の偶然の現象だが、そこから、このうるわしい、豪奢な渾沌を前にする、心のありようということを思う。
 あきら子も、さかのぼれば村山槐多も、豪奢な絵や言葉を、かいこが美しい絹を吐くように生んだ。しかし彼らの現実は、生活は、豪奢ではなかった。その輝きは、彼らの人生の、際の、崖っぷちの向こうの空白からわいてきた。
 千葉で穏やかな生活を送るように見える藤原の心にも、崖があり、描くことは、きっとその先と向かいあうこと、戦い、生きることなのだ。
 絵のすさまじい、うねりときらめきに、そう感じる。(企画 大倉 宏)

藤原祥2017.3

藤原 祥(ふじわら しょう)
1950年島根県松江市生まれ。スペイン古典の内面の劇性表現に強く惹かれる。79年サン・フェルナンド国立美術学校 (スペイン/マドリード)卒業。77年タラベラ・デ・ラ・レイナ賞名誉賞受賞。個展は島根県立博物館、ギャラリーHera(ストックホルム)、ギャラリー睦 (千葉)、ニッチギャラリー (東京)等。新潟絵屋では2007年11月、08年9月、10年5月、12年3月に個展開催。

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PHOTO(上): 「生きものの居る風景」
PHOTO(下): 「異境の花」2016年 ミクストメディア/和紙 105.0×102.0cm

梅田恭子展 –かごのなかから–

3月22日wed―30日thu

vol.520

 去年、砂丘館で展示した2003年の銅版画集『ツブノヒトツヒトツ』の制作時に、梅田恭子は「これはひそやかな抵抗です」と語ったという。そのことを思い出しながら、今年の個展に展示される絵を見ている。ツブは季刊誌『版画芸術』のために制作された100点以上の銅版画のこと、ヒトツヒトツはそれが手渡される世界、国家、集団、家族に生きるひとりひとりの、個、つまり『私』のことだった。なぜその、一人ひとりに、ツブは向けられなくてはならなかったのか。
 今回は、これまでの絵と一見、一転したかのような人の顔や手、葉や実や枝を描いた。素朴な素描のようだが、しみてくる絵だ。人がいい。そして手が。たったひとりの場所で、じかに触れてくるものとともに、いま生きている存在のヒトツヒトツを、確かめるように、画家は見つめている。
(大倉 宏)

梅田恭子

梅田恭子 (うめだ きょうこ)
1971年東京都生まれ。多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業、96年同大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。94年から個展を中心に、東京、新潟、名古屋、大阪、神戸、宇部などで作品展を開催。新潟絵屋では2010年3月、12年3月、14年11月、砂丘館で16年2月(北書店同時期)に個展開催。刊行物に銅版画集 『ツブノヒトツヒトツ』(言水制作室)がある。http://umedakyoko.com/wp

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PHOTO(上): 「午睡 - leaf 3」
PHOTO(下): 「レモンを持つ右手」 2016年 色鉛筆・油彩/紙 38.5×28.5cm

緑川俊一展

2月2日[木]―12日[日]

vol.516 

 長くパソコンに向かって、入浴し、瞑目すると、湯の熱とともに、意識が置き忘れていた体が、緑川俊一の絵の格好で戻ってきた。目で見るのではない<体が体で感じる体>を、からだと呼ぶとするなら、緑川の人はそのからだを描いている。
 絵屋での緑川展は4度目だが、いつも敏感に反応してくれる観手が、ダンサーの堀川久子だ。その堀川は1980~90年代に山梨県白州町で、身体気象農場という、農業をしながら体や踊りを考える活動を田中泯らとしていた。堀川の独舞は視覚的にも美しいが、それだけでなく、場の空気を、見る者の内部のからだを揺らすきわだった力をもつ。
 緑川の顔や人もまた、人間存在の「身体気象」を、雨や雲や空や朝や日を、ときに劇的にまた微妙に、とどまることなくうつろう〈からだ〉の、ひとつとして同じもののない風景を、情景を、描いている。いつも新しく、瑞々しく、独特で、見飽きることがない。
 今回はその緑川展の会場で、堀川久子が踊る。どのような気象が、風が、光が、絵屋を通過するだろう。(企画 大倉 宏)

緑川俊一(みどりかわ しゅんいち)
1947年東京都生まれ。67年絵を始める。71年小笠原諸島の父島、母島、72年小樽、77年東京、88~91年ニューヨークに住む。マエダ画廊(名古屋)、現代画廊、ギャラリー川船、空想・ガレリア、ギャラリー汲美、羽黒洞木村東介(東京)、たけうち画廊(新潟)などで個展。ほかグループ展多数。新潟絵屋では2001・09年個展、2013年に吉田淳治との素描2人展を開催。千葉県船橋市在住。

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PHOTO(上): 「かお」制作年不明

緑川俊一作品
PHOTO(下): 「ひと」2016年 ダーマトグラフ/紙 42.1×29.8cm

関連イベント 堀川久子踊ル 緑川俊一展の新潟絵屋にて
2.10[金] 19:00~ 参加料1,000円/要申込。新潟絵屋へ

*新潟絵屋から徒歩10分の新潟市美術館の「木村希八さんの贈り物」展(1/28~3/5)でも、刷り師、コレクター、画家であった木村希八のコレクションの1点として、緑川俊一の作品が出品されています。あわせてご覧下さい。