長尾玲子展 「クリスマス」

12/1[水]―15[水]

niigata eya exhibition 622

 クリスマス。思い出すのは菓子をつめこんだ紙の長靴のあざやかな赤と、その人がどうしてここに来れたのかふしぎだったということ。もしも長尾玲子の刺繍絵が身近にあったなら、彼は大きくも小さくもある、自在な存在なんだと思えたかも知れない。ひな祭りも端午の節句もない家に育った私や、同じような「戦後の」子供たちにとって、クリスマスは年にたった一度の、女の子にも男の子にも平等に開かれた特別な日だった。その特別な光の井戸の深い底から糸を引き出して、サンタクロースを、聖なる夜を、長尾さんは飽くことなく刺繍しつづけてきた。
 長尾さんの「サンタさん絵本」の魅力は、彼女の子供時代に淵源をもつ、鮮烈な体験から生まれているのではないだろうか。それを直接聞いてみたいけれど、サンタクロースよりもっと出不精で内気な作者は、口ごもって応えてはくれなさそうだ。その人が持ってきてくれたもの、そのものの記憶が消え去ったあとに残るなにか。そのなにかを袋にたっぷりつめこんで、雪の夜空を、屋根を、靴下を、もみの森を、窓枠の陰を、輝く糸と針から生まれた赤い人は走りつづける。(企画者:大倉 宏)

会期中および12月17~19日は長尾玲子さんの絵本を限定部数お取り扱いしております

PHOTO(上左から): 「スノーフレーク」「クリスマスのツリー」「緑の靴下」

長尾玲子(ながお れいこ)
1963年東京都生まれ。専門学校東京YMCAデザイン研究所デザイン科卒業。デンマークSKALS手工芸学校終了。オーストラリアNMITイラストレーション科卒業。Diploma取得。絵本に『クリスマス・イブのおはなし』セット全3冊、『サンタさんありがとう』『サンタさんとこいぬ』『ざっそうの名前』『ぼくの草のなまえ』(福音館書店)がある。個展多数。新潟絵屋では2008年「12ケ月のサンプラー」、09年「私的花言葉」、11年「市場のスケッチ」、13年「サンタ展」開催。2010年より新潟市在住。

長尾玲子
「シクラメン」

長尾玲子
「ツリーを駆け上がる」

長尾玲子
「贈り物」


「北の森」


絵本もご用意しております

長尾玲子
『サンタさんありがとう』1998年 税込1,210円 福音館書店出版

長尾玲子長尾玲子長尾玲子長尾玲子

『クリスマス・イブのおはなし』『あっちゃんとゆびにんぎょう』『100こめのクリスマス・ケーキ』『サンタさんのいちにち』
1995年 3冊セット税込1,980円 福音館書店出版

長尾玲子
『サンタさん』2020年 税込1,100円 福音館書店出版

長尾玲子
『ぼくの草の名前』2017年 税込1,210円 福音館書店出版


▶ 2013年12月 「サンタ展」長尾玲子
▶ 2011年12月 長尾玲子展「市場のスケッチ」
▶ 2009年12月 長尾玲子展「私的花言葉」
▶ 2008年12月 長尾玲子展「12ヶ月のサンプラー」