麻績 勝広 展

9月22日thu,holiday―30日fri

vol.505

 糸魚川市の姫川流域は表情豊かな石に恵まれているという。特にいろいろな縞模様が見られるところに特徴があるそうだ。お母さんをはじめ身内に糸魚川市特産の翡翠やメノウや観賞用の石を商ったり蒐集する人がいて麻績さんは幼いときから石に囲まれて育った。長じて絵の対象に迷ったとき、「そうだ、姫川の石があるじゃないか」と再発見して20年余りになる。
 なぜ石なのかと問われることも多い。そういうときはこれ以上に身近なものはないですからと、答えることにしている。絵解きは観る人それぞれに任せればよいということらしい。今では石は母のようなものと言う麻績さんは迫らず、滋味深く、柔らかな眼差しで石たちをみる。だからか、描かれた石はあまり堅そうにも重そうにも見えない。マットな絵肌で存在感、質感を超えて表現される。何も描かれない余白のような背景に姫川育ちの石たちだけが思い思いに座を占める。
 絵屋で石を鑑賞する「水石」を楽しみ、薀蓄を傾けて欲しい。(小見 秀男)

麻績勝広(おみ かつひろ)
1962年新潟県糸魚川市生まれ。86年新潟大学教育学部美術科卒業。88年新潟大学大学院教育学研究科美術教育 西洋画修了。2003~08年「にいがた写実集団」展出品。07年第84回春陽展奨励賞。同年第9回フィレンツェ賞展(雪梁舎美術館/新潟市)大賞受賞、それにより08年イタリアで2ヶ月間の絵画研修。08年第85回春陽展春陽会賞。09年「記憶のかたち」展(県立万代島美術館)。10年第87回春陽展奨励賞受賞、春陽会会員に。長岡市在住。

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photo:「石(ジャクレ)」2016年 油彩/キャンバス 37.9×45.5cm

カルベ アキシロ 展

9月12日mon―20日tue

vol.504

 今回の作品は我が家から周囲4kmの身近な自然の風景をモチーフに田んぼ・大峰山からの下りてくる川・山々・木々と四季折々の風景から生命を感じ、それらを絵にしました。
 これまで気がつかなかった身の回りの風景が、毎日周囲を歩くことで気がつきはじめた、自然の普遍的な構造や法則性について自分なりの発見があり、それを表面的な物ではなく本質を抽出するような絵を描いてみたいと挑戦しています。(カルベ アキシロ)

カルベ アキシロ(軽部 明代)
1952年東京都生まれ。昭和49年仕事の関係で新潟県胎内市(旧中条町)に赴任。いろいろな思いを自分なりに表現したくなり、52才の時に会社勤めの傍ら絵を描きはじめる。その後、新発田美術会に入会。現在は会社を定年退職し、新しい出会いや、先輩、仲間たちとの交流の中で刺激を受け日々絵の制作に励んでいます。新発田市在住。2013年9月新発田市市民ギャラリーにて初個展。15年9月自由美術初入選。

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photo:「胎動」2016年 油彩/麻布 パネル 41.0×31.8cm


新潟絵屋では、空間のレンタルを行っていません。いくらで借りれますか? と、実はよく聞かれます。準企画展は、新潟絵屋で作品を発表したいという意欲ある作家を応援するための個展方式です。こちらも空間の貸し出しということではなく個展を一緒に作って行くものです。ご興味がある方は新潟絵屋までお問い合わせ下さい。 担当:井上美雪

中島 世津子 展

9月2日fri―10日sat

vol.503

 中島世津子は描きに描いたことが、あるに違いない。練達という言葉が、紙を切るように、撫でるごとくに走る一本の線からも浮かんでくる。私が引かれるのは、偶然さえもあやつってしまえる程の素描の伎倆に、けれど微妙に、確乎として、あらがうものがあること。そのことを画家が懊悩しつつ、欲してもいるらしいこと。そう感じさせる、魅惑的なゆらぎ、不安定が、ことに水彩に、ガラス絵にきらめいていたことだった。ガラス絵での個展を最初にお願いすることにしたのはそのような「小勢」に、ひとりの見るものとして寄りそいたいと願ったからでもある。
中島を教えてくれたのは、昨年砂丘館で個展を開いた早川俊二で、早川夫妻と中島は数十年前、パリで出会った。昨秋この町に来て、新潟絵屋を見て、ふたりは今は三重の松坂市に住む旧友を思い出したのだった。(企画 大倉 宏)

中島世津子(なかしま せつこ)
1978年パリ エコール・デ・ボザール デッサン科卒業、80年同絵画科卒業。88年帰国後は、現代日本美術展、ビエンナーレまくらざき「風の芸術展」、「太陽のプロヴァンスにて日本展」、岡田文化財団パラミタミュージアムなどに出品し、2000~03年・15年アスクエア神田ギャラリーにて個展開催。12年作品集『中島世津子 素描』(用美社刊)刊行。 www.setsukonakashimadameme.com

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photo:「ハルカ」2016年 水彩/ガラス 16.0×22.0cm

BAKU 斉藤 写真展 時の向こうがわ

8月21日 sun ― 30日 tue

vol.502

作家在廊予定日:会期中毎日

 詩人の斎藤健一さんの企画でBAKU斉藤の写真展「アンコールの顔」を開催して7年になる。
 アンコール遺跡ではない写真展の話は、その会期中に、斉藤さんからあった。画像でそれらを見せられ、とまどったのは、同じ写真家の仕事とはすぐに飲み込めなかったせいで、7年はそれをこちらが、飲み込むために要した時間だったかもしれない。
 当惑は、BAKUのアンコール写真をリアリズムだと見たせいだった。世界中で展示されるそれらは、アンコールの像そのものの力で、見る者を印象づける。しかし実際に立体物を画廊で展示する経験を重ねると、立体の実力=そのものの力を、平面である写真に立ち上がらせる難しさの並大抵でないことが分かってくる。熱帯の森で、大きな足場を組み、大型カメラで野外の巨像を撮影する。それだけでも大変だが、しかしそれだけでは、巨像の力は伝えられない。そこで生きたのが、今回展示する写真などで、BAKUが時間をかけて蓄積した写真を作る、構成する経験だった。アンコールの像は、足場の上のカメラの背後に立つ、写真家のそのプリズムを通過して、そのものの力を、写真の中でもう一度、獲得したのだ。(企画 大倉 宏)

BAKU 斉藤(バク さいとう)
1948年新潟市生まれ。94~2005年日本国政府アンコール救済チームや他のミッションに参加、アンコール遺跡群の尊顔を撮りはじめる。06年カンボジア王国政府より「サハメトライ・トッパデット級勲章」を受章。2016年エコグローバルミュージアム(カンボジア・プレアヴィヒアにある博物館)にて常設展示。主な著書は『アンコールの神々-BAYON』(小学館)、『アンコールと生きる』(朝日新聞社)、『幻都バンティアイ・チュマールの神々』(梧桐書院)、 『カンボジアの宝石箱』(連合出版)、『初めてのアンコール』(草土文化出版)等。

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PHOTO: 「Visitants 1 (Accomplished was incident)」1986年 伊豆大島・裏砂漠 カラー

■ 8/21(日)18:00~ BAKU斉藤ギャラリートーク 聞き手:大倉宏 500円/予約不要

Mi-Yeon 写真展 Alone Together

8月2日 tue ― 11日 thu,holiday

vol.501

作家在廊予定日:8/2・3・6・7

 「あっ、」という感嘆を何度も飲み込んで彼女の写真集を見続けた。映された物質との距離感、微妙なフォーカス、観る者を誘いに来る強くてやさしい肌合い。…経過とともに観えてくる…溶けて、自己同一化する他者。ふれあう気質の多様な調べ、空間の基調を聴き取る写真家と、その絶妙な間隔に浮遊する被写体。くりかえしのリズムに、ただよう空気は時間のベクトルを自由に変化させた。同じ地平に、点滅する無数の次元。そこにある闇と光こそ、真実。…ヒト、人、人間…。人間とモノ、風景、事象。出会いと、さまざまな経過と、確かな存在のうつせみ。彼女の眼の前で変容する一本の草も、娘の成長も、そして、われと汝に象徴的なハトの飛翔も、ミーヨンの視座に組み込まれて物語となった 。
 作家の感性のバルブから解き放たれる自由な発想が、柔軟な写真世界で、たわわに実った果実として収穫される。そんな時間の推移が、絵屋の空間に現出する。ここから試されるのは観る者としてのあなたと、作品の肌合い。(企画 石井仁志)

Mi-Yeon(ミーヨン)
韓国ソウル市生まれ。1988年渡仏。パリ写真学校icart photoで写真を学ぶ。個展は、2000年「EXISTENCE」、01年「I was born ソウル・パリ・東京」、02年「2歳の瞬間(とき)」、03年「中年ビューティ」、13年「Alone and Together」(以上まで東京)、15年「Alone Together」(ソウル)、15年「I and Thou」(パリ)等。主な出版に写真集『よもぎ草子―あなたはだれですか』(窓社)、『Alone Together』(kaya books)、エッセイ・写真『いまここにいるよ』(偕成社)、『I was born ソウル・パリ・東京』(松柏社)等がある。2015年より長岡造形大学非常勤講師。東京都在住。

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PHOTO: 「Series Alone Together #26」2011年 モノクロ

■ 8/2(火)19:00~ 日本酒の会 ミーヨンさんを囲んで、恩田酒造(長岡市)のお酒を聞き酒します。2,500円/定員12名/要予約

■ 8/6(土)18:00~ ギャラリートーク ミーヨン・石井仁志 聞き手:大倉宏 500円/予約不要
関連情報 7/23~30…ミーヨン写真展「よもぎ草子ーあなたはだれですか」
会場:ギャラリーmu-an(長岡市呉服町2-1-5 0258-33-1900 11:00~17:00)

小木曽瑞枝展/長谷川徹展 @ギャラリーみつけ

ギャラリーみつけで新潟絵屋が企画協力する展覧会

 ギャラリ―みつけと新潟絵屋と砂丘館
家のような雰囲気の新潟絵屋が、まさしく家であった砂丘館(元々は日本銀行新潟支店長の役宅)を指定管理するようになり7月で早11年になりました。広い空間を生かし大規模な展覧会を企画したり、絵屋と砂丘館で、同時期に関連する展覧会を企画することがあります。
今年3月、新たに受託した見附市の市民ギャラリー「ギャラリーみつけ」が開館しました。2階建ての元法務局を改装した空間には3つの展示室があり、それらを自主企画展、見附市委託事業展、貸室展に活用し運営しています。映画館で例えると、絵屋はスクリーンがひとつで、ギャラリーみつけは3つある、という感じでしょうか。3室を使っての大規模な展示もあれば、ひとつの建物内で3つの展覧会に出合えることも。
8月は、ギャラリーみつけで新潟絵屋が企画協力する展覧会があります。この機会にぜひお訪ねください。

第一弾

小木曽瑞枝展
「何処でそれを失くしたのか、こころあたりはありませんか」
7月30日 sat ― 8月14日 sun

ワークショップ 8月7日 sun
① 10:00/小3以上 ②14:30/中学生以上
各2時間・800円・各10名先着順

小木曽瑞枝展小木曽瑞枝展

PHOTO: 「切花(自然怪盗)


第二弾

長谷川徹展
8月20日sat―9月4日sun

画歴の長い長谷川徹の作品を新旧交え展示する。

P1120131長谷川徹展

PHOTO: 2015年10月 新潟絵屋「長谷川徹展」/ 出品予定の旧作

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ギャラリーみつけ

休館日:月曜日 10:00~22:00 *入館受付~21:30 *最終日~17:00
見附市昭和町2-4-1 TEL. 0258-84-7755
https://www.gallery-mitsuke.com