片桐 翠 展

7月22日fri―30日sat

vol. 500

作家在廊予定日: 作家在廊予定日: 7/22~24・30
ギャラリートーク 7/22[金] 19:00~20:00

 片桐翠の絵を網膜に入れる瞬間に感じる違和感と興味は、なんだろう。
 サイケという言葉が口の端に浮かびかけて、とどまる。その感じ。サイケな色は意識の箍がゆるんだ場所から、あふれ出す刺激の洪水だけれど、絵を描く片桐の意識のガードは、存外にゆるくなさそうだ。
 しかし、変、ではある。ピンクのごま塩のマリア像に、なぜリンゴ? 「パリのお母さん」のうしろにオニギリみたいな緑がごろんとしている、そのへんてこさに、当のお母さんがまるで無頓着なのがおもしろい。絵の「変さ」値が高いが、過剰に高すぎず、普通そうな表情をしているあたり。微妙かつきわどい路線を、今回も堅持してきて、うならせられる。(企画 大倉 宏)

片桐 翠(かたぎり みどり)
1978年新潟市生まれ。99年青山学院女子短期大学英文科卒業。渡英。ウェストミンスター大学(ロンドン)で映画とイラストレーションを学ぶ。2006年創形美術学校造形科卒業。第1回パリ賞受賞。副賞でシテ・インターナショナル・デ・ザール(パリ)に8か月滞在。個展は07年知足美術館、08・10・12・14年新潟絵屋、11・13年アートスペース88国立、14年新潟県立植物園など。13年マレーシアArt Expo、14・15年枝香庵のクリスマス(ギャラリー枝香庵)出品。

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PHOTO: 「マリア像と林檎」2015年 油彩/キャンバス 35.0×35.0cm


Event 夜間営業 7/8[金]・15[金]・22[金] 21:00まで開廊!

作家ギャラリートーク
7/22[金]19:00~20:00 聞き手・大倉 宏 参加料500円 予約不要

坂爪 勝幸 展

7月12日tue―20日wed

vol. 499

作家在廊予定日: 7/12・15〜18・20
ギャラリートーク 7/15[金] 19:00~20:00

 新潟絵屋での前回の坂爪勝幸展は12年前。
 アメリカ時代のモノタイプを中心に紹介したその個展の2日目に、中越地震が起きた。
 大地震はあれからもあり、世の中もいろいろあったけれど、坂爪にも京都で数ヶ月入院するという事件があって、その折病院を抜け出して古寺の庭を見て歩いたのが陶器による「石庭」シリーズのきっかけだったいう。
 作品撮影に胎内市の工房へ行き、シリーズの新旧作に花器の新作などをレンズごしに覗いて発見があった。例えばこの耳のついた花器は花器でありながら、火山の噴火口や平安期の仏像、はてまた後ろ姿の羅漢のようにも見える。若き日のモノタイプを閃光とすれば、光の残像が闇に重なる多重世界の気配が深まってきた。茶道を育んだ中世仏教の空気を思い出す。(企画 大倉 宏)

坂爪勝幸(さかづめ かつゆき)
1947年村上市生まれ。九州・韓国で陶芸、築窯技術を習得。1979年に国際交流基金より客員教授として米国ニュージャージー州立アートセンターへ派遣。アメリカ各地で作品展開催、陶芸・築窯指導を行う。86年帰国。胎内市(旧中条町)に築窯。越後妻有アートトリエンナーレ2000、水と土の芸術祭2009・2012出品。03年万代島美術館、04~09・12年画廊Full Moon、05年砂丘館、10・15年燕市産業史料館、13年カールベンクス古民家ギャラリーで個展。新潟絵屋は04年ぶり。

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PHOTO: 「おりべ」2016年 h29cm


Event 夜間営業 7/8[金]・15[金]・22[金] 21:00まで開廊!

作家ギャラリートーク
7/15[金]19:00~20:00 聞き手・大倉 宏 参加料500円 予約不要

井田 英夫 展

7月2日sat―10日sun

vol. 498

作家在廊予定日: 会期中毎日
ギャラリートーク 7/8[金] 19:00~20:00

 昨夏数ヶ月行って来ると広島呉市に旅立った井田英夫が、年が改まっても戻らず、個展を前にした初夏、ようやく絵を携えて戻ってきた。その絵がよかった。特に夜釣りをする男のいる海辺の絵は、何とも言えない臨場感、空気感がある。新潟の海辺と違い、そこは倉橋島という本土に接触する寸前まで近づいた島の、狭い海峡の海で、アーチ橋はそこに架かる第二音戸大橋とのこと。夜の光に浮かび上がる橋の光と影と色がまた素晴らしい。夜釣りをする人は、毎晩そこに来るそうで、井田もその手前に大きなキャンバスを立てて、絵を描いた。潮の香りと水と自動車の音の入り交じった、どこか時間がとまったような、穏やかな瀬戸内の岸辺の空気が、絵の中で永遠の生命を得ている。
 個展のあとはまた呉に帰るという。渡り鳥のように。(企画 大倉 宏)

井田英夫(いだ ひでお)
1975年旧新津市生まれ。97年新潟デザイン専門学校卒。1999年モンセラート美術大学(アメリカ、マサチューセッツ州)卒業。ミンゴーギャラリー(マサチューセッツ州)で二人展。02・04・06・07・09・10・12・13・14年新潟絵屋、05年ギャラリーEMU-st(新潟)、11年久留米市一番街多目的ギャラリー、12年三方舎書斎ギャラリー(新潟)、15年天仁庵(広島)で個展開催。15年8月下旬から16年5月呉市音戸町に滞在。

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▶みるものとよいところ 会場のようす②

PHOTO: 「音戸の夜」2016年 オイルパステル・油彩/キャンバス 72.7×91.0cm


Event 夜間営業 7/8[金]・15[金]・22[金] 21:00まで開廊!

作家ギャラリートーク
7/8[金] 19:00~20:00 聞き手・大倉 宏 参加料500円 予約不要

荻間 久美 展 「イデア―私の心臓」

6月22日wed―30日thu

vol.497

作家在廊予定日: 6/22〜26・30

 荻間さんが制作をする胎内市の坂爪勝幸工房を訪ねた。いつも制作以外のことが忙しいと坂爪さんが言った。土や釉薬を作る、草や木を刈る、などなど。用意されたものを使うのではなく、使うものは時間をかけて自分たちで作る。
新作は素焼き前の状態で、木枠の中で宙づりに浮かんでいた。木枠の天地左右を変えながら360度の視点で制作するためだ。いくつかは木枠時代を経て、ウレタンの上でごろんと転がっている。次の工程を待つ土の塊に期待を持った。火を受けてむくむくと力をつけそうだ。
荻間さんは後から次の言葉を寄せてくれた。
「イデア」という言葉には、もともと持っている本質という意味があります。私はその中心にある種のような、人の中心にある心臓のようなものに強く憧れを持っています。この多様で複雑な形は、私自身かもしれません。
(企画 井上 美雪)

荻間久美 (おぎま くみ)
1978年新発田市生まれ。2003年陶工房セラにて、06年坂爪勝幸工房(胎内市)にて制作。坂爪勝幸氏に師事。09年大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ妻有焼展入選。08年2人展 「ハナとウツワのカタチ」(カーブドッチ・薪小屋)、10年グループ展「この界隈のビジュツ―〈いま・ここ〉のパフォーマンスを上げる―」(ギャルリー炎舎)、12年グループ展「風の通り道」(芹川画廊/銀座)、水と土の芸術祭2012プレイベント「東日本大震災復興支援 松浜地区心意気ARTフェスタ」出品など。14年新潟絵屋にて個展。

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PHOTO: 「イデア Complex Form」h35cm

栗田 宏 展

6月2日thu―10日fri

vol.495

作家在廊予定日: 6/2・5・9

 私の中では、映像や画像と言われるものの対極に絵がある。その意識と感覚を育んでくれたのが栗田宏の絵だった。複製できない、いま、ここ――現在の一刻、この地点に自分がいるという実感を磁石のように吸い寄せる「見えるもの」である、絵。
今回の展示では4年前に村松のギャラリーで発表した2点の白い絵を絵屋の壁に掛ける。図版という画像に変換されるとただの白にしか見えないだろう。けれど実際にそこにある絵は、画像を、画像的な見え方をつきやぶって、そこに在る。それを見る私も、ここに、いる。
数年前から体調をくずした栗田宏は、制作のペースをおそろしく緩めた。私がこの稿を書いている時点(2016年5月)でも、新作をまだ「準備中」だ。それでも新しい絵が1点、あるいは何点か生まれるだろう。そのために、栗田宏の展示を企画し続けたい。
(企画 大倉 宏)

栗田 宏 (くりた ひろし)
1952年白根市(現新潟市南区)生まれ。白根市役所に勤務し、在職中より絵を描き始める。その後、退職し絵に専念。「生成」「気」「密」などのテーマで制作を続ける。84・85年現代画廊(東京)、2000・02・04・14・15年新潟絵屋、04・05・07・08・09・10年画廊Full Moon、07年砂丘館、11年阿彌陀瀬(五泉市)にて個展。11年 「栗田 点 華雪」、13年 「平野充・栗田宏」開催。89年 「新潟の絵画100年展」(新潟市美術館)、新潟の絵画100年展」(新潟市美術館)、00年 「見えない境界 変貌するアジアの美術 光州ビエンナーレ2000(アジアセクション)日本巡回新潟展」(新潟県民ギャラリー)出品など。

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PHOTO: 「而今」 左/1980年代 右/2000年代

蓮池 もも 展 「あお/あか」

6月12日sun―20日mon

vol.496

作家在廊予定日: 会期中毎日

 いきもの がいる。
あお/あかの連作を見て、そう思った。いきものと言うなら、草や木も大地も、風や崖や沼も生きている。そういう生命が、これまでの蓮池ももの絵にはあった。けれど、このいきものは、さわるとぬるっとしていたり、ぐにゃっとしていたり、体温があったり、くねったりまるまったりする、そういう 「いきもの」だ。けもの的、ホニュウルイ的と言ってもいいかも知れない。目が顔が、女のからだがあったりするから――だけでなく。
青と赤は、これまでの蓮池の絵をつらぬく色でもあった。凛とした、鉱物的な、直立的な、どこか毅然と〈はばむ〉色でもあった青と赤が、進化の階段をのぼって、受けいれる色、あおとあかに変態したようだ。(企画 大倉 宏)

蓮池もも (はすいけ もも)
1983年新潟市生まれ。2006年fullmoon upstairs、07・08・09・10・11年画廊Full Moon、12年砂丘館で個展。新潟絵屋では10・12・13・14・15年個展、15年ギャラリー島田にて個展開催。12・13・14年絵屋便・表紙絵を連載する。12年2月「新潟の画廊から 栗田 宏/アンティエ・グメルス/蓮池もも」(ギャラリーKANI/東京中野)出品。

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6.15(水)蓮池ももギャラリートーク

19:00 聞き手:大倉 宏 参加料500円

PHOTO: 上「あお014」2015年

PHOTO: 下「あか014」2016年 ともにアクリルガッシュ・紙 14.8×10.5cm

蓮池もも展「あお/あか」

関連情報

2016.7.2(土)~7(木)

ギャラリー島田deux(神戸市)に巡回します。

7.2(土) 17:00 ギャラリートーク

聞き手:島田 誠