塩﨑 貞夫 展

3月2日thu―10日fri

vol.518

 砂丘館と2会場で開催する塩﨑貞夫展。
 3年前に亡くなった塩﨑の絵を、新潟の個展で見たとき、絵の匂いがすると思った。すこし甘いようだけれど、凛とした匂いだった。いい絵は匂いがする、と誰かが言ったけれど、本当にそうだ。絵柄としては痩せた女がもやのような空間に横たわる絵を、記憶するのみだったけれど、本人にはよくお会いした。新潟に来ると絵屋にも寄ってくれた。女のイメージが、古墳や塔や山や満開の桜やコスモスなどに変幻し、そのどれもが「死と鎮魂」のモチーフを奏で続けていたことを、昨秋ご遺族宅で残された遺作を通覧して感じた。
 その主題は画家個人にとって何だったのだろう。生きている寂しさと、死んでいる寂しさが、同じである空間を、画家は絵という大地に建築しようとしていたのだったかも知れない。そのひと続きの空間を歩きたい。生きる者と死せる者が視線を、ささやきをかわす空間の匂いを呼吸しながら。(企画 大倉 宏)

塩﨑貞夫(しおざき さだお)
1934年新潟県糸魚川市に生まれる。10代の頃療養生活を送る。56年国画会に初入選、以後毎年出品。63年国画会新人賞を受賞し会友となる。73年国画会を退会。77年~2005年文藝春秋画廊 (東京)で隔年で個展。97年アートギャラリー環 (東京)で個人コレクションによる清宮質文・塩﨑貞夫展。2007・08・09・10年 フォルム画廊(東京)で個展。04年~14年ギャラリー壹零參堂 (鎌倉)で隔年で個展。ほかアトリエ我廊(新潟)、たけうち画廊(新潟)、南青山画廊 (東京)、ギャラリー青雲 (東京)、ギャラリートータク (東海市)で個展。14年2月14日没。14・16年フォルム画廊で遺作展 が開催された。

塩﨑貞夫展_箸の墓古墳

PHOTO(上): 「矢田丘陵の辺り」
PHOTO(下): 「箸の墓古墳」 1985年 油彩/キャンバス 65.0×50.0cm

同時期開催
2.15[水]~3.20[月祝] 会場:砂丘館
3.4[土] ギャラリートーク 「レクイエムの画家」
3.3[金] セミナー「箸の墓と卑弥呼の時代」

砂丘館会場のようすをブログでお伝えしています。

藤原 祥 展

3月12日sun―20日mon,holiday

vol.519

 藤原祥の近作が田畑あきら子の絵に近接して見えるのは、私の目の中の偶然の現象だが、そこから、このうるわしい、豪奢な渾沌を前にする、心のありようということを思う。
 あきら子も、さかのぼれば村山槐多も、豪奢な絵や言葉を、かいこが美しい絹を吐くように生んだ。しかし彼らの現実は、生活は、豪奢ではなかった。その輝きは、彼らの人生の、際の、崖っぷちの向こうの空白からわいてきた。
 千葉で穏やかな生活を送るように見える藤原の心にも、崖があり、描くことは、きっとその先と向かいあうこと、戦い、生きることなのだ。
 絵のすさまじい、うねりときらめきに、そう感じる。(企画 大倉 宏)

藤原祥2017.3

藤原 祥(ふじわら しょう)
1950年島根県松江市生まれ。スペイン古典の内面の劇性表現に強く惹かれる。79年サン・フェルナンド国立美術学校 (スペイン/マドリード)卒業。77年タラベラ・デ・ラ・レイナ賞名誉賞受賞。個展は島根県立博物館、ギャラリーHera(ストックホルム)、ギャラリー睦 (千葉)、ニッチギャラリー (東京)等。新潟絵屋では2007年11月、08年9月、10年5月、12年3月に個展開催。

PHOTO(上): 「生きものの居る風景」
PHOTO(下): 「異境の花」2016年 ミクストメディア/和紙 105.0×102.0cm

梅田恭子展 –かごのなかから–

3月22日wed―30日thu

vol.520

 去年、砂丘館で展示した2003年の銅版画集『ツブノヒトツヒトツ』の制作時に、梅田恭子は「これはひそやかな抵抗です」と語ったという。そのことを思い出しながら、今年の個展に展示される絵を見ている。ツブは季刊誌『版画芸術』のために制作された100点以上の銅版画のこと、ヒトツヒトツはそれが手渡される世界、国家、集団、家族に生きるひとりひとりの、個、つまり『私』のことだった。なぜその、一人ひとりに、ツブは向けられなくてはならなかったのか。
 今回は、これまでの絵と一見、一転したかのような人の顔や手、葉や実や枝を描いた。素朴な素描のようだが、しみてくる絵だ。人がいい。そして手が。たったひとりの場所で、じかに触れてくるものとともに、いま生きている存在のヒトツヒトツを、確かめるように、画家は見つめている。
(大倉 宏)

梅田恭子

梅田恭子 (うめだ きょうこ)
1971年東京都生まれ。多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業、96年同大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。94年から個展を中心に、東京、新潟、名古屋、大阪、神戸、宇部などで作品展を開催。新潟絵屋では2010年3月、12年3月、14年11月、砂丘館で16年2月(北書店同時期)に個展開催。刊行物に銅版画集 『ツブノヒトツヒトツ』(言水制作室)がある。http://umedakyoko.com/wp

PHOTO(上): 「午睡 - leaf 3」
PHOTO(下): 「レモンを持つ右手」 2016年 色鉛筆・油彩/紙 38.5×28.5cm

ギャラリー&ミュージアムマップ 2017.2-3

私たちは、画廊や美術館を巡るひとが増えるにはどんな環境が必要か、考え続けています。
2008年創刊、毎月無料配布の情報冊子です。

新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ | gallery & Museum Schedule 2017.2-3

2017年2月17日(金)- 3月25日(土)

カルベ アキシロ 展

9月12日mon―20日tue

vol.504

 今回の作品は我が家から周囲4kmの身近な自然の風景をモチーフに田んぼ・大峰山からの下りてくる川・山々・木々と四季折々の風景から生命を感じ、それらを絵にしました。
 これまで気がつかなかった身の回りの風景が、毎日周囲を歩くことで気がつきはじめた、自然の普遍的な構造や法則性について自分なりの発見があり、それを表面的な物ではなく本質を抽出するような絵を描いてみたいと挑戦しています。(カルベ アキシロ)

カルベ アキシロ(軽部 明代)
1952年東京都生まれ。昭和49年仕事の関係で新潟県胎内市(旧中条町)に赴任。いろいろな思いを自分なりに表現したくなり、52才の時に会社勤めの傍ら絵を描きはじめる。その後、新発田美術会に入会。現在は会社を定年退職し、新しい出会いや、先輩、仲間たちとの交流の中で刺激を受け日々絵の制作に励んでいます。新発田市在住。2013年9月新発田市市民ギャラリーにて初個展。15年9月自由美術初入選。

photo:「胎動」2016年 油彩/麻布 パネル 41.0×31.8cm


新潟絵屋では、空間のレンタルを行っていません。いくらで借りれますか? と、実はよく聞かれます。準企画展は、新潟絵屋で作品を発表したいという意欲ある作家を応援するための個展方式です。こちらも空間の貸し出しということではなく個展を一緒に作って行くものです。ご興味がある方は新潟絵屋までお問い合わせ下さい。 担当:井上美雪

BAKU 斉藤 写真展 時の向こうがわ

8月21日 sun ― 30日 tue

vol.502

作家在廊予定日:会期中毎日

 詩人の斎藤健一さんの企画でBAKU斉藤の写真展「アンコールの顔」を開催して7年になる。
 アンコール遺跡ではない写真展の話は、その会期中に、斉藤さんからあった。画像でそれらを見せられ、とまどったのは、同じ写真家の仕事とはすぐに飲み込めなかったせいで、7年はそれをこちらが、飲み込むために要した時間だったかもしれない。
 当惑は、BAKUのアンコール写真をリアリズムだと見たせいだった。世界中で展示されるそれらは、アンコールの像そのものの力で、見る者を印象づける。しかし実際に立体物を画廊で展示する経験を重ねると、立体の実力=そのものの力を、平面である写真に立ち上がらせる難しさの並大抵でないことが分かってくる。熱帯の森で、大きな足場を組み、大型カメラで野外の巨像を撮影する。それだけでも大変だが、しかしそれだけでは、巨像の力は伝えられない。そこで生きたのが、今回展示する写真などで、BAKUが時間をかけて蓄積した写真を作る、構成する経験だった。アンコールの像は、足場の上のカメラの背後に立つ、写真家のそのプリズムを通過して、そのものの力を、写真の中でもう一度、獲得したのだ。(企画 大倉 宏)

BAKU 斉藤(バク さいとう)
1948年新潟市生まれ。94~2005年日本国政府アンコール救済チームや他のミッションに参加、アンコール遺跡群の尊顔を撮りはじめる。06年カンボジア王国政府より「サハメトライ・トッパデット級勲章」を受章。2016年エコグローバルミュージアム(カンボジア・プレアヴィヒアにある博物館)にて常設展示。主な著書は『アンコールの神々-BAYON』(小学館)、『アンコールと生きる』(朝日新聞社)、『幻都バンティアイ・チュマールの神々』(梧桐書院)、 『カンボジアの宝石箱』(連合出版)、『初めてのアンコール』(草土文化出版)等。

PHOTO: 「Visitants 1 (Accomplished was incident)」1986年 伊豆大島・裏砂漠 カラー

■ 8/21(日)18:00~ BAKU斉藤ギャラリートーク 聞き手:大倉宏 500円/予約不要