カルメン・ラ・グリエガ展

私の指は、亡霊(ゴースト)たちのコーラス

8月2日wed ― 13日sun

vol.533 企画:大倉宏・堀川久子 作家在廊日:会期中来日予定

 日本の夜は昔はもっと暗かった。妖怪や幽霊や鬼はその闇を住処とする生物だったのだろう。
 スペイン人の画家カルメン・ラ・グリエガは、その妖怪の日本に惹かれている。その日本での初個展のテーマを 「亡霊」に定めたのも、妖怪へのリスペクトからであるらしい。スペインに妖怪はいない、と昨年、初めて新潟でお会いしたとき、語っていたのが印象的だった。
 これらの絵は毎日定時に、ギリシャの古い音楽を聴きながら、指で(絵筆は使わず)描かれたという。ここにも、豊かな闇の気配がある。その闇はクモの糸のようにねばつくものでできていて、指が差し込まれると、たちまち吸着し、引き込もうとする。その力と、画家の力の、一進一退の攻防のあいまにたちあらわれる、イメージや声が、これらの、妖怪に似て、怖しいが、ユーモラスで、哀愁ただよう、悲しげで、どこか愉しげでもある 「亡霊」たちなのだろう。
 怪談の季節である日本の夏に、遠いスペインからやってくるゴーストたちは、いまや希少生物となったヨーカイたちと、夜の闇ではたして出会えるだろうか。(大倉 宏)

表紙カルメン展A-kiss

Carmen La Griega(カルメン・ラ・グリエガ)
1971年マドリッド生まれ。1989~94年マドリッド・コンプルセント大学で美術を学ぶ(のち同大学で美術教育の研究に従事)。93~98年アテネの美術大学にてジョルジュ・ラパスの研究助手。スペイン、ドイツ、オーストリア、キューバなどで絵画、パフォーマンスの発表を行う。2017年ソフィア王妃賞美術部門、マドリッド・シティ・カウンシルのドローイング部門で表彰される。2000年より子供たちと大人のための美術ワークショップに携わる。

https://carmenlagriega.org/

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO(上): 「KISS」2017年 油彩/紙 35.0×26.0cm
PHOTO(下): 「SAINT TERESA,MORADA 1」2017年 油彩/紙 35.0×26.0cm

後援 スペイン大使館
Embajada-JAPON+CE_ESPAÑOL-01


関連イベント
ギャラリートーク
8.3[木] 19:00〜20:30
聞き手: 高橋郁丸(新潟妖怪研究所所長)、大倉宏 通訳: 高橋景子
参加料: 500円/申込不要
3日のみ22時まで開廊
個展開催までの背景や妖怪、亡霊への興味など、様々な方面から作家の声を聞く。


関連イベント
堀川久子ダンス・見えない彼方へ
8.11[金・祝] 19:00〜
参加料:1,000円/要申込 info@niigata-eya.jp (お名前・人数・ご連絡先)
 
展覧会の空間で行なうパフォーマンス。作品に堀川久子がどのように反応し、どのような踊りが生まれるのか。


Report 蓮池もも展ギャラリートークを開催

6月17日夜、蓮池もも展ギャラリートークを開催。お話のテーマは「動物」に。このひとときだけ、旧作の「けもの」をイーゼルに立てました。中盤では作詞・谷川雁、作曲・新実徳英の「卒業」を流しました。二番の歌詞に「なぜけもののわかさはつらいのか」とあります。若さや変化についての話題へと展開しました。国際映像メディア専門学校で演技を学ぶ学生グループや様々な年代の方にご参加いただいたギャラリートークでした。

井田英夫 新作展

7月22日sat―30日sun

企画vol.532 作家在廊予定日:会期中毎日 ★夜間営業:7/22は21時まで営業

 

 去年7月の個展で新潟に戻った井田英夫は、個展後も、しばらく新潟にいて、また広島の呉の音戸に帰っていった。どちらに戻って、どちらに帰るのか。人の姿をしたわたり鳥は、今年も夏の新潟に来て、砂丘館と絵屋とギャラリーみつけの3カ所で個展をする。
 寝起きする布団と畳を描いた新作がいい。彼の傑作「走る粗大ゴミⅢ号」同様に、写真像からのゆがみが観察できる。井田はときに写真を参考にするらしいが、写真で描くのでなく、あくまで目で、ガラスではない肉の目で、見て描いている。人間の目が人間の生きる環境を見る。そのとてもシンプルなことが、美しい色の輝きを持つ絵の姿で、ここにある。
(企画 大倉 宏)

井田英夫(いだ ひでお)
1975年旧新津市生まれ。97年新潟デザイン専門学校卒。1999年モンセラート美術大学(アメリカ、マサチューセッツ州)卒業。ミンゴーギャラリー(マサチューセッツ州)で二人展。02・04・06・07・09・10・12・13・14・16年新潟絵屋、05年ギャラリーEMU-st(新潟)、11年久留米市一番街多目的ギャラリー、12年三方舎書斎ギャラリー(新潟)、15年天仁庵(広島)で個展開催。15年8月以降、広島県呉市音戸町に滞在。

▶みるものとよいところ 会場のようす

同時期開催「ふだんを見つめる 井田英夫展」
2017年7月14日(金)〜8月27日(日)
会場 :砂丘館(新潟市中央区西大畑町5218-1)
9:00〜21:00/入場無料/月休
◆井田英夫ギャラリ―トーク
2017年7月22日(土)15:00~16:30
会場:砂丘館/聞き手:大倉宏/参加料:500円 

→トークの様子をご覧いただけます
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◆「井田英夫新作展」は巡回します!
2017年8月10日(木)〜23日(水)
会場 :ギャラリーみつけ(見附市昭和町2-4-1)
10:00〜22:00/入場無料/月休
◆井田英夫ギャラリ―トーク
2017年8月19日(土)14:00~15:00
会場:ギャラリ―みつけ 
新作のほかにも旧作をセレクトして展示します。砂丘館や新潟絵屋でご覧いただいた方にもおたのしみいただける内容です。

井田英夫 新作展「布団」

PHOTO(下): 「布団」2016~17年 油彩/キャンバス 60.6×80.3cm

◆井田さんの絵が掲載された本が、7月2日に発売されます
田代草猫 句集「猫」発売

フジタヨウコ展

7月12日wed―20日thu

vol.531 作家在廊予定日: 7/12・16・17・20

 フジタヨウコは去年、村上の海に近い自宅の一角に穴窯(あながま)を築いた。10月の初の窯焚きを、見に行った。焚き口を開け薪を足すときに見える火に血がざわめいた。窯を囲む人々も、一様に気分が浮き立っていた。燃え盛る火にはふしぎな力がある。それは人が原始から受け継ぐ心中のなにかに働きかける。
開かれた厚い本に銀色の枯れ木の立つ作品は、その窯で焼かれた。表面は、薪の灰が融けた自然釉。火中に降る灰に濡れた平原のなだらかな起伏が美しい。
 見に行った時はまだ素焼き状態だったが、まるまる肥えた鳥が、猫や犬や渦の上に乗る、フジタらしい作品群も準備されていた。この人の造形は、幻想的なイメージに、どこか原始(初)の気配がある。
 その秘密は火にあるのかも知れない。(企画 大倉 宏)

フジタヨウコ (藤田 陽子)
1995年女子美術短期大学卒業。96年同専攻科修了。同年坂爪勝幸氏に師事。2000年新潟現代美術リレー展、08年越後の花鳥画展(農舞台/十日町市)、11年女子美術大学アートミュージアム「予期せざる出発」、16年アートスタジオDungeon「地下光学」(東京)出品。個展は、03・04年ギャルリー炎舎(新潟市)、05~10年(毎年)11・13・15年新潟絵屋、09年ギャラリーいなば(東京)、10年ギャラリーさやけ(新潟市)、12・14・16年ギャラリー彩(新発田市)など。09年長三賞、13年日本陶芸展入選。16年地元の村上市瀬波温泉にアトリエと教室、ショップを兼ねた「Toi 陶房」設立。

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「失われた言葉と風景」2017年 陶 55.0×34.0×H25.0cm

PHOTO(下): 「失われた言葉と風景」2017年 陶 55.0×34.0×H25.0cm

木下 晋 展

7月2日sun―10日mon

vol.530 作家在廊予定日: 7/2・3・10 予定が変更になりました

 昨年の砂丘館での木下晋展では、パンダの絵本の原画を展示した。動物の母子の別れに、木下自身の体験が重なり、絵と絵本のリアリティとなっているのではないかと感じた。人を描くときも、有名無名にかかわらず、自分に興味のある人しか描かないという話が、ギャラリートークであった。
 皺のひだまで精密、細密に描く木下の鉛筆画の客観への偏執は、その対象が画家の主観の世界に巻き起こす感情のはげしさを、絵の底に放って、絵を破壊しない、保つための強固な壁としてあるのではないだろうか。
 絵本原画とともに展示された合掌図や、目をつぶる若い女性を描いた「風」などの大作の前に立つと、画家の個人的な感情が、リアリズムの船に乗って、他者である私の感情の浜にひそかに着岸し、動かされるのだった。 (企画 大倉 宏)

木下 晋 (きのした すすむ)
1947年富山県生まれ。70年新潟に転居。81年瞽女小林ハルに出会い、83年モデルに制作を開始。2005年桜井哲夫をモデルに制作開始。名古屋芸術大学特別客員教授、武蔵野美術大学客員教授、金沢美術工芸大学客員教授。紺綬褒章受章。ギャラリー、美術館での展覧会多数。著書に『ペンシルワーク 生の深い淵から』(里文出版)、『木下晋画文集 祈りの心』(求龍堂)、絵本に『熊猫的故事』(文・唐亚明/二十一世紀出版社)、『はじめての旅』(福音館書店)など。2017年横浜トリエンナーレに日本作家の一人として参加。

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木下晋展「光へ」

PHOTO(上): 「美しき遵奉」2008年 
PHOTO(下): 「光へ」(モデル 桜井哲夫)2015年 鉛筆/紙 52.5×77.0cm

蓮池もも展

6月12日mon―20日tue

vol.528 作家在廊予定日: 毎日 午後数時間

 蓮池ももの絵は、ある時期から、年々、劇的な変化をとげてきた。
 今年の絵には乳を飲む動物の子など、画家の実人生につながるイメージも登場したが、同時のこれまでの甦りや、回想とも見えるモチーフもあらわれ、「変化すること」からの変化が感じられる。とはいえ、私たちに親しいそれらのイメージを描いた以前の絵を思い返し、実感されるのは、殻のほどけということだ。
 ある時期まで蓮池の絵にあった、独立したての独立国のような、瑞々しい緊張感の解体が始まっているような気がする。具体的には絵筆の微細な仕草、絵具を溶かす水のやわらかさに、より開かれた色の表情など。
人生でいう「性徴期」を過ぎて、ゆるやかな推移の時代が始まったのかも知れない。人がそうであるように、絵も生きものであることを、改めて感じる。
(企画 大倉 宏)

蓮池もも(はすいけ もも)
1983年新潟市生まれ。2006年fullmoon upstairs、07・08・09・10・11年画廊Full Moon、12年砂丘館で個展。新潟絵屋では10・12〜16年毎年個展、15・16年ギャラリー島田にて個展開催。12~14年『絵屋便』表紙絵を連載する。俳誌『白茅』13号から「森の奥 湖の底」(画とエッセイ)連載。十日町市在住。

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◆ギャラリ―トーク
2017年6月17日(土)19:00~20:00
会場 :新潟絵屋 展示室
蓮池もも × 大倉宏
参加料:500円 

蓮池もも 乳

PHOTO(上): 「山の水」2016年 アクリルガッシュ/紙 24.3×33.0cm
PHOTO(下): 「乳」2017年 アクリルガッシュ/紙 24.3×33.5cm