後藤裕子展

8/19[月]―9/1[日]

niigata eya exhibition 676

 後藤裕子の絵は、基礎トレーニングの礎あってのことかと思うけれど、平面的に見えながら、その実、立体的である。旧居の長岡はちょうど山地と平野の境目に位置して、そこから海や野や山に行って会う風景が生まれていた。長野に移ってからの近作では、以前はやや奥に隠れていた立体的性格が、ぐっと前面に出てきた。遠方の山はシルエットだが、近くの山は光のうつろいとともにゴツゴツした立体感を刻々とあらわす。画家の目がその生きた「立体」を深呼吸し、我が意を得たというように光りだしている。(企画者:大倉宏)

後藤裕子(ごとう ひろこ)
1951年東京都生まれ。父に画集を祖母に油絵具箱を贈られる環境で育つ。美大を経て油彩画を組成と技法から学び直そうと仏留学し、帰国後は子育てや介護等家庭の中で過ごす。夫の赴任地新潟県長岡市で病院や施設に風景画を飾る機会があり、スケッチと構成画制作を始めた。2019年~長野県に移り住む。

PHOTO(上):「五百歳の桜」2024年 油彩/紙 25×45.5cm

後藤裕子
PHOTO:「採石場」2024年 油彩/紙 32.5×45cm

後藤裕子


▶ 後藤裕子展 2020
▶ 後藤裕子展 2018

井田英夫遺作展 5

8/3[土]―16[金]

niigata eya exhibition 675

 展覧会のたびに、井田さんが温めていたものを発見する。最初は2018年の支援展のとき。作家に代わり絵を選び、写真で、出品していいもの、手元に置きたいものを確認した。出品しないことにした絵の1つに、ぞうきんの素描があった。その後、それがパステルや絵の具で描かれることはなかったが、どんな絵を温めていたのだろう。
 さて、今回は新潟にまつわる絵で構成することにした。「Iさんの背中」は絵屋で働く私が登場する絵だ。椅子の背もたれと背中との空間を描きたかったと、当時聞いた。(企画者:井上美雪・大倉宏)

井田英夫(いだ ひでお)
1975年旧新津市生まれ。97年新潟デザイン専門学校卒業。99年モンセラート美術大学卒業(米国)。2002年より新潟絵屋、05年ギャラリーEMU-st(新潟)、11年久留米市一番街多目的ギャラリー、12年三方舎書斎ギャラリー(新潟)、15年天仁庵(広島)で個展開催。 15年8月~20年4月広島県呉市音戸町に滞在。17年は新潟絵屋とギャラリーみつけ(新潟)で新作展、砂丘館で回顧展を開催。18年4月、新潟市の2会場で有志の企画による「井田英夫支援展」が開催される。19年新潟絵屋で個展開催。20年4月27日逝去。23年4月『井田英夫画集』発行(井田英夫画集刊行委員会)。

PHOTO(上):「小口神社」油彩/キャンバス 91×73cm

井田英夫
PHOTO:「Iさんの背中」2012年 パステル・オイルバー/キャンバス 74.0×56.2cm

井田英夫遺作展5


井田英夫画集
井田英夫画集
旧新津市(現新潟市秋葉区)出身の画家、井田英夫さん(1975-2020)の1999年~2020年までの約440点を掲載した画集です。

収録作品:彩色画/スケッチ、素描/小さい絵
新にいがた市紀行映像作品「井田英夫展」(2010より)
寄稿:荒井直美・近藤達雄・大倉宏
発行者:井田英夫画集刊行委員会/事務局:新潟絵屋
3,300円〈税込〉

取扱店
:新潟市 新潟絵屋/砂丘館北書店シネ・ウインド三方舎書斎ギャラリー
新潟県内 燕市・ツバメコーヒー/見附市ギャラリーみつけ/長岡市・たびのそら屋
広島県呉市音戸 天仁庵

句集『猫』 田代草猫 著
井田さんの作品を表紙・中頁に使った句集。第二刷・増補版を発行します。

句集『猫』

文庫本サイズ/102頁/初版2017年発行
発行者:認定特定非営利活動法人 新潟絵屋
編集・装丁デザイン:dododo
表紙・イラストレーション:井田英夫
1,100円〈税込〉

++++

HATSUME


HATSUME

村上市産 ナチュラルアロマスプレー 黒文字
新潟県関川村の黒文字の枝から蒸留して作ったエッセンシャルオイルと水のみで作ったアルコール不使用のスプレー。衣類に、空気のリフレッシュに。パッケージの絵を井田さんが描いています。
30ml 1,320円 / 100ml 3,300円 〈各税込〉

++++


関連記事
2023年:▶ 井田英夫 遺作展 4
2022年:▶ 井田英夫 遺作展 3
2021年:▶ 井田英夫 遺作展 2
2020年:▶ 井田英夫 遺作展——音戸の素描を中心に井田英夫遺作展@砂丘館
2019年:▶ 井田英夫展
2018年:▶ 井田英夫 巡回支援展
2017年:▶ 井田英夫展、砂丘館 ギャラリートークの動画
2016年:▶ 井田英夫展
2014年:▶ 井田英夫展
2012年:▶ 井田英夫展
2010年:▶ 井田英夫展
2009年:▶ 井田英夫展
2007年:▶ 井田英夫展
2006年:▶ 井田英夫展
2004年:▶ 井田英夫展
2002年:▶ 井田英夫展

Shop Information 6月-7月

しんぞうさんのバッグとTシャツ

8/16[金]まで〈期間限定販売〉

しんぞうさんによる近年の絵や陶芸作品をプリントした個性的なグッズをご紹介します。展示室に隣接したショップスペースにもぜひお立ち寄りください。

しんぞう:1974年神奈川県生まれ、新潟市在住。武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業。アクリル絵画の平面作品を中心に、近年は陶芸も制作。自分自身の内面を見つめることをテーマに、家族や日常を作品にしています。 www.sinzow.com

しんぞうさんのバッグ
バッグ
綿100% 32×25cm・マチ付
5,500円〈税込〉

しんぞうさんのTシャツ
Tシャツ
綿100% 男女兼用S・M・L・XL
5,500円〈税込〉

eyashop


「吉田淳治油彩展 生まれ出るもの」関連グッズ

エッセイ集『ゆらぐハコ/Trembling Box』

2019年10月から2020年9月まで愛媛新聞文化欄に連載した52編のコラムを一部加筆修正し書籍化。宇和島を拠点に作家活動を続けてきたこれまでや暮らしの中で見えてきたものなど。散歩の道すがら撮影したというモノクロ写真22点が彩りを添える。

吉田淳治

2022年/Gmagazine出版社/196頁

1,650円〈税込〉

吉田淳治 水彩画ポストカード

水彩画ポストカード12枚セット
2018年/発行:JY絵club

1,200円〈税込〉

eyashop


カテゴリー: SHOP

ギャラリー&ミュージアムマップ 2024.6/20~7/25

展覧会を見に行こう!
2008年創刊、毎月無料配布の展覧会情報紙です。

新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ
Gallery & Museum Schedule 2024.06-07

2024年6月20日(木)- 7月25日(木)

ギャラリー&ミュージアムマップ 2024年6月-7月号

チラシのダウンロード(PDF)

ギャラリー&ミュージアムマップ 2024年6月-7月号


チラシのダウンロード(PDF)

本紙 配布場所のご案内

中央区 aigallery、ニカイギャラリー、STACK-BOARDアートギャラリー万代島ギャラリー長美堂、メディアシップ、hickory03travelers蔵織コンチェルト・西堀ゆきわ、にいがた銀花医学町ビル、医学町画廊、 新潟美術学園、あらきギャラリー、羊画廊、新潟絵屋、万代島美術館敦井美術館新潟市美術館砂丘館NSG美術館ゆいぽーと、篠田桃紅作品館、北方文化博物館新潟分館あさひまち展示館旧齋藤家別邸旧小澤家住宅みなとぴあ知足美術館、新潟駅観光案内所、なり、五徳屋十兵衛、クロスパル、シネ・ウインド、三宮商店、ナガイ画材、器、SWAN、パルム、涼蔵、竹野、ノ縞屋、新潟県民会館、新潟デザイン専門学校、市民活動支援センター、ホテル日航新潟、りゅーとぴあ、NHK文化センター、峰村醸造直売店、今代司酒造、新潟大学駅南キャンパスときめいと、絵画教室ウニアトリエ、新潟県立生涯学習推進センター、栄楽亭、エフスタイル、i media専門学校、アートホテル新潟、北書店

北区 楓画廊てんゆう花、nico、ビュー福島潟、ARTギャラリーHAFU
東区 She is、巻菱湖時代記念館、フォトスタジオHOX
南区 SHIRONE PRESSO
江南区 小さな美術館季、エムスタジオ、北方文化博物館
秋葉区 やまぼうし三方舎新潟市新津美術館
西区 雪梁舎美術館ギャラリー潟道
西蒲区 浜つばきギャラリー野衣、いわむろや

新発田市 清水園
胎内市 胎内市美術館
村上市 Toi陶房(瀬波温泉)
柏崎市 游文舎gallery tanne(谷根)グルグルハウス高柳
長岡市 たびのそら屋県立近代美術館、長岡造形大、栃尾美術館
見附市 ギャラリーみつけ
燕市 燕市産業史料館gallery SAI、ツバメコーヒー
三条市 D+5 ART、三条ものづくり学校
栃尾市 栃尾美術館
弥彦村 弥彦の丘美術館

本間裕介写真展

鎧潟をさがす旅/Journey To Find Yoroigata

6/16[日]―30[日]

niigata eya exhibition 672

 本間裕介の写真は、ネイチャーアクアリウムと写真の師である天野尚の写真と違っている。と、一目で感じられる。
 印象的なのが視点の低さで、身をかがめ、小動物の目で撮ったような写真が多い。しかしそれを「方法」としているのではなく、自然にそうなってしまうというふうで、そこがいい。
 見ていると、美しさに溶けて、どこかやわらかくも、切実な感情が聞こえてくる。現存する潟である佐潟を見つめながら、干拓で消えた鎧潟を探していると本間は言うのだが、その思いは、幼い日にその鎧潟で無数の命とたわむれた記憶から、美しい、生きた水槽を創造した天野の記憶を源流とする。それが本間という川に合流し、その水音が、無数の命を一挙に殺戮した干拓事業という過去に、私の目を誘っていく。(企画者:大倉 宏)

Yusuke Homma’s photographs are different from those of his mentor in Nature Aquarium construction and photography, Takashi Amano. One can sense this at a glance.
What is striking is the low point of view. However, this is not a “method,” but rather a natural way of taking pictures, and I like that.
When you look at them, you can hear the soft, yet sincere emotions melting into the beauty. Homma says that he is looking for the Yoroi Lagoon, which disappeared due to land reclamation, while gazing at the existing lagoon, Sagata; his thoughts’ headswaters originate from Amano’s memory of creating a beautiful, living aquarium based on his childhood memories of playing with countless aquatic lives in the Yoroi Lagoon. It joins a river called Homma, and the sound of its waters lures my eyes into the past of a land reclamation project that killed countless lives in one fell swoop. (Exhibition Planner: Hiroshi Okura)

本間裕介(ほんま ゆうすけ)
1975年新発田市生まれ。幼少から川や田で遊び、中学時代からアクアリウムの魅力にはまる。18歳で天野尚と出会い、ネイチャーアクアリウムや自然に対する考え方に共感する。写真家でもあった天野の撮影やネイチャーアクアリウムの制作助手を天野が亡くなるまで約20年間務めた。現在、株式会社アクアデザインアマノの水景クリエイターとして啓蒙活動を行っている。写真の個展は今回が初。
instagram@yusuke_homma_ada

Yusuke Homma
Born in 1975 in Shibata City, Japan. He played in rivers and rice paddies from childhood, and became fascinated with aquariums in junior high school. At the age of 18, he met Takashi Amano, with whom he shared his views on Nature Aquariums and nature. He worked as an assistant in photography and in Nature Aquarium production with Amano, who was also a photographer, for about 20 years until Amano’s death. Currently, he is engaged in enlightening activities as an aquascape creator for Aqua Design Amano Co., Ltd. This is the first solo exhibition of his photographs.
instagram@yusuke_homma_ada


ギャラリートーク「鎧潟をさがして」
6/28[金]18:30 ― 19:30

本間裕介 聞き手 大倉宏
参加料500円/定員15人/要申込
新潟絵屋へメール等でお申し込みください。
→満席となりました
info@niigata-eya.jp
tel.025-222-6888
当日、Instagramライブ配信でご覧いただけます。

本間裕介写真展

本間裕介 写真展


作品は店頭および通販サイトeyashopにてお求めいただけます
本間裕介


「天野尚写真展―創造の原点―」
6/8[土]― 7/21[日] 9:30 ― 17:00

休館日:月曜日(7/15は開館)、7/16
入館料600円(中学生以下無料)
会場:雪梁舎美術館 新潟市西区山田451
tel.025-377-1888

同時期に新潟市で天野尚さんの展覧会も開催されています。


BSNテレビ
NEWS「写真家・水景クリエイターとして活躍した亡き師匠 天野尚の原点 消えた『鎧潟』を探して…」

*動画をご覧いただけます(2024.6.20放送)

Johan Svensson展

6/1[土]―14[金]

niigata eya exhibition 671

 一度見て惹かれたものが、ずいぶん時間が経ったあとで唐突に想起され、猛烈に見たいと欲することがある。Johanさんのペインティングがそれだ。落書きするように手を動かすなかで現れた人物や動物たち。描いて描いて描くことで、思わぬ着想を得て、それが立体や動画制作に生かされることもある。ストックホルムのスタジオ訪問から二年。ポップでシュールで癖になる、Johan Svensson日本初個展です。(企画者:岡部安曇)

Sometimes, after a long time has passed, something you saw once that attracted you
suddenly comes back to you, and you have an intense desire to see it again. Johan Svensson’s paintings are it. Two years have passed since my visit to his studio in Stockholm. Still, faces and animals that emerged from the doodle-like movements of his hands have revisited my mind.
By drawing and drawing and drawing, he gains unexpected perspectives and occasionally it can be applied to create three-dimensional or video works.
Pop, surreal and addictive, this is Johan Svensson’s first solo exhibition in Japan. (Exhibition Planner: Azumi Okabe)

PHOTO(上):「The Fish That Loved Johan Svensson」2018 アクリル/紙 14.8×20.8cm

Johan Svensson展
「Snake Surprise」2023 アクリル/紙 40.8×30.8cm

JohanSvensson
PHOTO:「The Smile」21×29cm acrylic on paper.

Johan Svensson (ヨハン・スヴェンソン)
1971年生まれ。マルメ芸術アカデミー及びウメオ大学ファインアート学院で学ぶ。カールスタッド(スウェーデン)在住。インスタレーション、アニメーション、彫刻、絵、文章を制作。インスタレーション、アニメーション、文章などのさまざま芸術表現を立体制作の手法を使って制作することが多い。日々の現実、時々の政治的な出来事、大衆文化の現象に言及した作品は、ホラー映画と子供向け番組の両方の特徴を持つ。見慣れたものをグロテスクに書き換えることが、芸術表現の原動力となっており、それは作品のスケールや、ある表現手段から別の表現媒体への動きに表れているかもしれない。スウェーデンでは、ヨーテボリ・アート・ギャラリー、ヴァナス、フェルグファブリケン、ボニエ・アート・ギャラリーなどで展覧会を開催。海外では、ヘルシンキ、イスタンブール、ロンドンなどで展覧会に参加。フィンランドのNIFCA、スウェーデンのIASPISよりスタジオ助成を受け、フィンランド、ストックホルム、カイロで制作滞在。これまでに7つのパブリックアート作品を手がけている。
www.johansvensson.org

Johan Svensson
Born in 1971, educated at Malmö and Umeå Art Academy but lives and works in Karlstad, Sweden. He works with installation, animation, sculpture, drawing and text. Different artistic expressions such as installation, animation or text are often combined with sculptural techniques.
The works touch on the reality of our time, everyday phenomena, political events of the day, phenomena from popular culture, and can have features of both horror films and children’s programs. The rewriting of the familiar into the grotesque is a driving method in his art. It can be about the scale of the objects or about a movement from one medium to another.
In Sweden, he has exhibited at Gothenburg Art Gallery, Wanås, Färgfabriken and Bonnier Art Gallery, among others. He has participated in several exhibitions abroad, including in Helsinki, Istanbul and London, and was a studio grantee at NIFCA in Finland and at IASPIS in Stockholm and the IASPIS studio abroad in Cairo. He has made seven public art works.
www.johansvensson.org

Johan Svensson展
「Screaming Fields of Sonic Youth(Cassettes)」2023 アクリル/石膏 上:7.2×12.6×1cm中:8.5×12.6×1cm 下:8.5×12.4×2.5cm

Johan Svensson展
PHOTO:「The end」30×20cm acrylic on paper.


Reference
▶ Part of a report on a visit to Swedish Artist
This report was wrtitten by Azumi Okabe in 2022
岡部安曇さんが2022年にヨハン・スベンソンさんを訪問したレポートをご紹介します。

Johan Svensson

http://www.johansvensson.org

 ストックホルム市の中心部、大通りに店舗が並ぶ地下鉄Slussen駅を出て少し歩くと、緑が眩しい森の公園があり、そこを通ると閑静な住宅街に出る。似た外観の大きな建物が並ぶ一角の1階(半地下のような場所)にJohanさんのスタジオがある。ウプサラの幼稚園にパブリックアートを設置したところで、スタジオはがらんとしているけれど、パソコンで作品を見せることができるからと連絡が来ていた。
 A short walk from the Slussen subway station, where stores line the main street in the center of Stockholm, leads to a forest park with shining greenery, and through it to a quiet residential area. Johan’s studio is located on the first floor (sort of a half-basement) of a corner lined with large buildings of similar appearances. He had just installed a public artwork in a kindergarten in Uppsala, and although the studio was empty, he said he could show me his work on his computer.



 Johanさんはスウェーデン南部の小さな農村の出身だ。母親がアーティストになりたかった人で、家には母親の描いたきれいな絵が掛けてあった。早くに結婚し、子供を産んで夢を叶えられなかった母が、それをぜひ息子にというようなプレッシャーは一切なかったという。大学まで南部で過ごし、その後、建築家/アーティストである妻とともにフィンランドへ。現在はストックホルムを拠点に制作している。自分がここに来ることができたのは、IASPISの支援があったからだと聞き、IASPISの存在の大きさを改めて感じる。
 Johan is from a small farming village in southern Sweden. His mother wanted to be an artist, and there were beautiful paintings by her hanging in the house. His mother, who had not been able to fulfill her dream due to marrying early and having children, never pressured him to do the same. And eventually he took a path that his mother couldn’t take. He spent his college years in the South and then moved to Finland with his wife, an architect/artist. He is currently based in Stockholm. He says that he was able to come here because of the support of IASPIS, and I learned once again the importance of IASPIS.

「心の中の仄暗い場所に体を浸しながら、時々浮かんでくる生き物」
“A creature that sometimes floats around, dipping its body into a dark place in the mind”

 Johanさんを訪問したいと思ったのは、Johanさんのウェブサイトのトップページにある、印象的なサングラスを掛けたカラスのドローイングに惹かれたからだ。それは「NIGHT TIMES」というタイトルの展覧会のために制作されたドローイングだった。
 Johanさんは落書き小僧だ。短時間にドローイングやペインティングをたくさん描く。繰り返し描いては、その発展を見る。
 面白い展開になることもあれば、そうでないことも多い。テーマがあることもあるが、何が出てくるのか、どうなるのかわからないのは一緒で、通常は現れたどの絵も批評はせず、振り返るのは展覧会のための作品を選ぶときだ。 
 We wanted to visit Johan because we were attracted by the striking drawing of a crow wearing sunglasses on the top page of his website. It was a drawing created for an exhibition titled “NIGHT TIMES.”
 Johan is a doodler. He creates a lot of drawings and paintings in a short period of time. He draws repeatedly and watches them develop.
 Sometimes it develops in an interesting way, often not. Sometimes there is a theme, but it is the same, not knowing what will emerge or how it will turn out. He usually does not critique any of the drawings that appear, and only looks back when he chooses a work for an exhibition.




 自然発生的なドローイングからアニメーションが生まれることもある。近作「Grass」がそれで、芝が伸びやかに生長し、風に気持ちよさそうに揺れる。と、大きなタイヤ(草刈車)がやってきて、短く刈り取られてしまう、という短編だ。この映像は、大きな木を寝かせたように配置したインスタレーション作品の、根に当たる部分に透明なフィルムを提げて、そこに繰り返し映写するという方法で展示した。木の周りには、ネズミの立体が配置され、絵本の世界の実写版のようだ。
 Sometimes spontaneous drawings give birth to animations. In a recent work, “Grass,” the grass is growing and swaying in the wind. Then, a big tire comes along and mows it down. This video was shown by repeatedly projecting a transparent film onto the roots of a large tree that was placed in a lying position in the installation. Arranged around the tree were three-dimensional mice, like a live-action version of the world of a picture book.



 子供からも大いに好かれそうなJohanさんの作品は、なるほど、3カ所の幼稚園や住宅地の広場にパブリックアートとして設置されている。串刺しにした野苺のシロップがけ(スウェーデンのおやつ)を巨大にした立体や、街灯の灯りを覆う部分が、ニット帽やキャップになっている作品。「驚怒哀楽」を地球に見立てた四つの球体に、それぞれ四つの感情を表した表情をつけて、高さと色を変えて設置した立体作品など、どれも思わず頬が緩むものばかりだ。
 Johan’s work, which seems to be well-liked by children, has been installed as public art in three kindergartens. There is a giant three-dimensional sculpture of skewered wild strawberries in syrup (a Swedish sweet), and a work in which the part covering the light of a street lamp is a knit hat or cap. Four spheres, each with an expression representing four different emotions; surprise, anger, pleasure and sorrow – were installed at different heights and in different colors.



 一方で、一番最初に取り組んだパブリックアートは、余命いくばくの人が静かに最期の時間を過ごすホスピスのための作品で、あの世とこの世を繋ぐ三つの「橋」を制作。構造が美しい立橋、タイで見られる家付きの橋、そして、古い映画からイメージを得た吊り橋だ。利用者に配慮し、あまりハードなものにならないように気を配って制作した。
 On the other hand, the first public artwork he worked on was for a hospice where people with little time left to live spend their final days in peace and quiet, and he created three “bridges” connecting this world and the next. Three “bridges” were created to connect the afterlife and the real world: a standing bridge with a beautiful structure, a bridge with a house as seen in Thailand, and a suspension bridge inspired by an old movie. The artist took care not to make the bridges too severe for the viewers.



「心の中の仄暗い場所に体を浸しながら、時々浮かんでくる生き物のよう」とは、大倉さんが評したJohanさんの印象だが、本当にそのとおりだ。見上げるほど背が高く、物静かで控えめだが、心の中の仄暗い場所で、ずっと絵を描いている少年Johan君がいて、ちょっと辛辣に、ちょっとニヒルに物事を見つめている。そのJohan君が、Johanさんの目の奥からこちらをじっと覗いている。そんなふうに感じた。人を惹きつける不思議な魅力のある人だ。
 Okura’s impression of Johan is that he is like a creature that sometimes floats around, dipping its body into a dark place in the mind, and he is absolutely right. Johan is tall, quiet, and reserved, but in a dark place inside his mind; there is a boy named Johan who has been drawing pictures for a long time, looking at things with a bit of a wry, slightly nihilistic attitude. He is peering at us from behind Johan’s eyes. That’s how I felt. He and his work have a mysterious charm that attracts people.


本レポートの全文はつぎのアドレスでお読みいただけます