美術分野における新潟市内組織基盤の形成と新たな可能性に関する調査研究 その2

はじめに

 本調査はアーツカウンシル新潟(公益財団法人 新潟市芸術文化振興財団)「文化芸術基盤整備促進支援事業」の助成を得て、認定NPO法人新潟絵屋がおこなった。昨年(2018年)1月から3月にかけて新潟市域の美術をめぐる総合的で正確な現状把握を目的に「美術分野における新潟市内組織基盤の形成と新たな可能性に関する調査研究 その1」(以下「前回調査」)としておこなった調査の継続、および補完するものとして実施したものである。

 前回調査の対象は主に美術作品の作り手たちが中心となっている美術団体・グループと、美術作品を展示・販売する場を運営している画廊であった。このうち美術団体の全てが「高齢化と後継者難」という課題を抱えていると回答。また「これまでの古い美術でなく、現代アートなども取入れていく」方向の必要を吐露する記述があった。また「画廊」が関わる「美術」の少なからぬ部分が、その記述がいうところの「古い美術」と目されるものであり、「現代アート」と上記の記述に書かれた、いわば「美術における新しい動き」の新潟市における姿が、前回調査の結果にはあまり反映できなかったと考えた。
 そのことをふまえ、前回調査の対象とした美術団体の構成員に比して、より若い世代の美術に関する意識や感情を把握し、また上記の「現代アート」の新潟市における浸透・影響の状況などを探るために、今回は「古い美術」「現代アート」などとなんらかの重なりや接点をもちつつ、活動をおこなっている比較的若い人々による個人、ユニット、グループと、その活動を担う個人を調査対象とすることにした。
 その背景としては、「高齢化と後継者難」に直面する(前回調査の対象とした)美術団体に対応する若い世代の美術団体やグループの存在を、残念ながらほとんど把握できなかったこと、その一方で「美術団体」ではないが、なんらかの形で美術的な性格をもつ多様な活動に関する情報が、近年増加してきたことがあった。
 調査の表題に掲げた「美術分野における新潟市内組織基盤の形成と新たな可能性」を今後考えていく場合、既存の美術の枠組みのみの調査だけでは、ことに「新たな可能性」について議論する素材、資料としては不十分と感じた。また今回の調査結果にも反映されているように、「美術」は近年、その意味を実質的に広げつつあり、概念としての新たな再編期を迎えている。この拡張された意味での美術に対応する視点をもって、現実の状況を率直に見つめることが、「新たな可能性」についての議論を意義あるものにすることができると考えた。
 なお今回の調査は、美術的なものと多様な活動との関わりをより重視し、対象とした個人、ユニット、グループの構成員の年齢は厳密には規定しなかった。しかし回答をいただいた方々の過半は20〜40代の人々であったため、全体としては前回調査とは異なる年齢層の意識を探る調査ともなったと考えている。
 前回調査と合わせて、結果を公開することで、新潟市域を軸に美術活動に関わる人同士の情報の共有を図り、互いの理解、交流、連携へ向けての議論の基盤の提供となれば幸いである。

■調査対象について

 今回の調査は認定NPO法人新潟絵屋が把握した情報に、アーツカウンシル新潟から提供された教示をもとに15の活動体(個人、ユニット、グループ)とその構成員である個人を対象に実施した。
 4つの活動体で複数の構成員が回答に応じてくださったため、回答者総数は22となった(但し、活動体自体に関わる質問に対する回答は15)。
 15の活動体の活動内容は、別添資料に記載したとおりいずれも多様でユニークなものである。前回調査の対象のうちの美術団体のほとんどが既存の美術ジャンルをベースとした制作者のグループであり、形態も同好会や愛好団体、あるいは他地域のそれと類似の組織の形をもつものが多いと考えられたことと比較して、対照的である。
 この活動内容の多様さは、これらの活動体の多くが、既存のジャンルや美術概念を基盤とするのではなく、構成員「個人」の感性や、個々の人生の履歴、行き当たった問題、あるいは時代の課題などに対する具体的な解決の模索などを出発点に発足していることに由来すると考えられる。
 こうした多様さは、調査対象の全体的イメージの提供が困難であるということでもあるが、調査結果を読み解く上で、ある程度の全体像の把握が必要と考え、若干恣意的な試みとなるであろうことをお断りしつつ、幾つかの切り口から、15の活動体を紹介する。

 活動体の名称は下記の通り(50音順)
 

 1 「Art unit OBI」
  美術作家と建築家のユニットで、社会解決にとりくむ。

 2 「株式会社T-Base-Life」
  空き家の活用に取り組む。アートの催しもおこなう。

 3 「越人会」
  空きビル活用に取り組む。アートの展示スペースとしても活用。

 4 「小須戸コミュニティ協議会特別委員会『薩摩屋企画委員会』」
  町屋を町歩き拠点として活用し、アートプロジェクトも展開。

 5 「タクミクラフト」
  新潟の伝統工芸の魅力を県内外と世界に発信。

 6 「手部」
  手でものをつくる「部活動」として発足。アートと普通の人々をつなぐ柔軟な活動をおこなう。

 7 「特定非営利活動法人いわむろや」
  地域の交流施設を運営。アートの催しも開催。

 8 「新潟と会」
  「新潟と」関わりのある多様なテーマで、毎年催しを開催。

 9 「西堀ゆきわ」
  多様な人々で運営するシェアショップ。ミニギャラリーも併設。

 10 「浜メグリ」
  クリエーターの工房を公開する町歩きイベントを定期的に開催。

 11 「ヒッコリースリートラベラーズ」
  「日常を楽しもう」をコンセプトに創作、デザイン、店舗などの活動を展開。

 12 「BOOKS f3」
  写真展も開催する、写真集専門書店として活動。

 13 「Bricole」
  地域、土地に根ざした文化を取材し、さまざまな形で発表する。古民家の一角で展示もおこなう。

 14 「べつのみかたプロジェクト」
  生活から生まれ実用以外の価値を見出されなかったものを「造形」の視点から見つめ直し、文化の多様な理解へつなげる活動をおこなう。

 15 「まちごと美術館」
  障がい者のアート作品のレンタルをおこなう。


報告書全体は次のページをご覧ください。

「美術分野における新潟市内組織基盤の形成と新たな可能性に関する調査研究 その2」


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蓮池もも 一筆箋

12/19[土]発売開始

SHOP INFORMATION

3種類の絵柄をセットにした一筆箋です。
通信販売サイト「eya shop」同時発売!

縦バージョン/横バージョン
各21枚綴(それぞれ3つの絵柄×7枚)
各税込880

縦バージョン
蓮池もも 一筆箋
横バージョン
蓮池もも 一筆箋

絵は、2020年3月の個展で発表した作品のモチーフ「灯台」「女たち」「白鳥」。
縦バージョンと横バージョンがあり、ふたつはゆるやかにつながっています。

蓮池もも 一筆箋

一筆箋のために描き下ろした「木」のモチーフは、2021年に発表する「生命の樹」のシリーズへと広がりました。

蓮池もも 一筆箋

原画:アクリルガッシュ/紙(2020年)

絵:

蓮池もも(はすいけ もも)
1983年新潟市生まれ。2006年fullmoon upstairs、07・08・09・10・11年画廊Full Moon、12年砂丘館で個展。新潟絵屋では10・12~19年毎年個展、15・16年ギャラリー島田(神戸)、16年ギャラリー枝香庵(銀座)にて個展開催。俳誌『白茅』13号から「森の奥 湖の底」(画とエッセイ)連載。十日町市在住。


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2021年の個展は2会場で開催いたします
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マトリョーシカ
ノート

通信販売しております

蓮池さんと作るオリジナルブランド「momonote(ももの手)」、今後もご期待ください。

華雪による書と篆刻の講座 第4期

『字がうまれたとき・書がうまれたとき』

1/12[日]17:00-19:30〈書〉

1/13[月・祝]13:00-15:30〈篆刻〉

第4期 「書の展開 ひとびとの間を生きる書」

 古代中国で漢字がつくられたときの様子を入り口に、書がどのように人びとの間で発展してきたのかを紐解きながら、字と書の起源を想像し、書くための技術がどのように育まれてきたのかを学びます。

 第4期は、時代が進むにつれ、変化してきた実用としての書の展開を追います。資料を参考に技術の発展を観察し、現代に繋がる書体の変遷を実際に書いて体験する150分。今回の実技では、篆刻は「篆書体」を、書は「隷書体」を習います。

華雪 講座


講師プロフィール

華雪(かせつ)
1975年京都府生まれ。立命館大学文学部哲学科心理学専攻修了、東京都在住。幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典に触れたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、以来、文字の表現の可能性を探求することを主題に、国内外で展示やワークショップを行っている。刊行物に『石の遊び』(平凡社、2003)、『書の棲処』(赤々舎、2006)、『ATO 跡』(between the books、2009)など。作家活動の他に、『コレクション 戦争×文学』(集英社)など書籍の題字なども手がける。
instagram kasetsu_sho

華雪による書と篆刻の講座

会場:新潟絵屋

  • 受講料:各回5,000円(テキスト・材料費込/篆刻と書を通しの方は500円割引)
  • 定員:各回8名(先着順/要申込)
  • 持ち物:メモする程度の筆記用具。筆や篆刻のお道具はご用意します。
  • 毎回、実技と座学をセットにした内容。全6期ですが単発での受講が可能です。

  • 華雪による書と篆刻の講座

    今後の予定・2020年

    第4期 ◆1/12[日]17:00-19:30〈書〉 ◆1/13[月・祝]13:00-15:30〈篆刻〉
    第5期 ◆4/12[日]13:00-15:30〈篆刻〉 17:00-19:30〈書〉
    第6期 ◆7/12[日]13:00-15:30〈篆刻〉 17:00-19:30〈書〉 (最終回)

    「書の展開・ひとびとの間を生きる書」のつづき。
    毎回取り上げる書体が異なります。

    お問い合わせ

    Tel. 025-222-6888(担当:井上)
    info@niigata-eya.jp


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    卓上万年カレンダー 「日暦」

    Shop Information

    華雪さんの書と篆刻が美しい日付の風景をつくりだす「日暦」。日常使いの小さな美術品で新年を迎えませんか。プレゼントにもおすすめです。

    「日暦」

    書・篆刻:華雪
    日カード:書31日(ハガキサイズ)
    月カード:篆刻12ヶ月
    新潟産ブナ材台座+アクリル背板
    英訳説明書付・ギフトボックス入
    企画・制作・デザイン:ドードー堂・新潟絵屋
    販売:株式会社博進堂
    3,960円(税込)

    さらに詳しくは→


    華雪による書と篆刻の講座『字がうまれたとき・書がうまれたとき』第3期

    1/12[日]17:00-19:30〈書〉

    1/13[月・祝]13:00-15:30〈篆刻〉

     時代が進むにつれ、書のあり方は次第に変化していきました。祈りの場から、ひとびとの間へ。実用としての書の展開を追います。実用に際してダイナミックに書体は変化を続けます。それにともなう技術の発展を観察しながら、現代に繋がる書体の変遷を実際に書いて体験してみます。10月に開催した前回は、篆刻・書ともに「篆書体」を習いました。1月にはまた別な書体を取り上げます。

     書や篆刻の技術を理論的に読み取り、それを実際に書く力を付けられるよう段階的に学びます。はじめてという方にもたのしんでいただける内容です。


    講師プロフィール

    華雪(かせつ)
    1975年京都府生まれ。立命館大学文学部哲学科心理学専攻修了、東京都在住。幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典に触れたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、以来、文字の表現の可能性を探求することを主題に、国内外で展示やワークショップを行っている。刊行物に『石の遊び』(平凡社、2003)、『書の棲処』(赤々舎、2006)、『ATO 跡』(between the books、2009)など。作家活動の他に、『コレクション 戦争×文学』(集英社)など書籍の題字なども手がける。
    instagram kasetsu_sho

    華雪による書と篆刻の講座

    会場:新潟絵屋

  • 受講料:各回5,000円(テキスト・材料費込/篆刻と書を通しの方は500円割引)
  • 定員:各回8名(先着順/要申込)
  • 持ち物:メモする程度の筆記用具。筆や篆刻のお道具はご用意します。
  • 毎回、実技と座学をセットにした内容。全6期ですが単発での受講が可能です。

  • 華雪による書と篆刻の講座

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    info@niigata-eya.jp


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    会場:いくとぴあ食花 こども創造センター

  • 対象:小学生・中学生
  • 申込期間:9/17(火)8:30から 9/30(月)17:30まで
  • 申込方法:以下のどちらかの方法でお申し込みください
  • 〈WEB〉新潟市かんたん申込み 〈TEL〉新潟市文化創造推進課 025-226-2624

    カテゴリー: NEWS

    華雪による書と篆刻の講座『字がうまれたとき・書がうまれたとき』

    Infomation

    〈書〉7/5[金]19:00-21:30
    会場:新潟絵屋

     *6/23時点、3人空きあり

    〈篆刻〉7/6[土]15:30-18:00
    会場:砂丘館

     *6/23時点、1人空きあり

     書は、はじめ祈りの中で必要とされたものでした。祈りは書をどのようにかたちづくったのでしょうか。古代のひとびとの思想を想像しながら、その書を実際に書いてみます。

    華雪(かせつ)
    1975年京都府生まれ。立命館大学文学部哲学科心理学専攻修了、東京都在住。幼い頃に漢文学者・白川静の漢字字典に触れたことで漢字のなりたちや意味に興味を持ち、以来、文字の表現の可能性を探求することを主題に、国内外で展示やワークショップを行っている。刊行物に『石の遊び』(平凡社、2003)、『書の棲処』(赤々舎、2006)、『ATO 跡』(between the books、2009)など。作家活動の他に、『コレクション 戦争×文学』(集英社)など書籍の題字なども手がける。

    華雪による書と篆刻の講座

    受講料:各回5,000円(材料費込/篆刻と書を通しの方は500円割引)
    毎回、実技と座学をセットにした内容。全6期ですが単発での受講が可能です。
    定員8名 ●お申込:新潟絵屋へ

    *このあとも講座は3ヶ月おきに続きます。詳細はホームページをご覧ください。

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    7/2[火]-15[月・祝] 
    会場:新潟絵屋+砂丘館